[SY20-1] 急性期低Na血症はなぜ生じるか?
集中治療室で低Na血症に出会うことは少なくないし、低Na血症を呈した患者の死亡率が高いことも知られている1。しかし、その原因をすぐに言い当てることは難しい。むしろ、ベテランになればなるほど、その原因についての学生や研修医から質問を受けることを嫌うかもしれない。低Na血症の原因には、SIADH、多飲症、中枢性/腎性塩類喪失症候群のような診断はともかくとして病態の説明しやすいものもあるが、偽性低Na血症、高血糖、イレウス、副腎不全、甲状腺機能低下症、また、ICUではよりありふれた心不全、腎不全、肝硬変なども低Na血症の原因となりうる。
低Na血症は、基本的にはNa量と体液量の相対的なバランスの問題で、体液量に対して体内のNa量が少ないことを示している。その調節には、Antidiuretic hormone(ADH)、腎でのNa排泄が関係し、ADH活性が低Na血症と強く関係している2。ADHの分泌刺激は、大きく1.血漿浸透圧、2.循環血液量、3.その他に分けられる3。1.血漿浸透圧; 視床下部の浸透圧受容器/細胞が血漿浸透圧の上昇に反応しADHの分泌と口渇を制御している。2.循環血液量;大動脈弓・頸動脈洞などの高圧循環系と心房を含む低圧循環系に、それぞれ、動脈圧受容体反射、心肺圧受容体反射が存在し、動脈圧の低下、血液量の減少でADHの分泌を起こす。心不全の低血圧時にもADHの分泌が生じる。3.その他; 吐き気や痛み、ストレス、様々な薬物でADHは分泌される。
ヨーロッパ集中治療医学会を含む3学会合同の低Na血症に対するガイドライン2では、急性低Na血症の急性とは記録で辿ることができるデータを基に48時間以内に発生したものを急性とし、それ以外を慢性と分類している。記録がない場合も原則慢性低Na血症として扱う。これは、24~48時間で脳細胞が低Na血症に対して耐性を形成し、急激なNa補正は浸透圧性髄鞘崩壊症候群(ODS)を引き起こす可能性のためである。また、そのガイドラインでは、急性低Na血症はその濃度の低さではなく、脳浮腫を示唆する症状がある時には、原因検索よりも緊急に対処することを推奨している。
本講演では、低Na血症の症例を提示し、低Na血症の診断について概説を行う。
1. Funk GC, et al. Intensive care medicine 2010; 36: 304-11. 2. Spasovski G, et al. European journal of endocrinology 2014; 170: G1-47. 3. Guyton AC, JE Hall JE:”ガイトン生理学”第11版:御手洗 玄洋 監訳.エルゼビア・ジャパン.pp374-377, 2010
低Na血症は、基本的にはNa量と体液量の相対的なバランスの問題で、体液量に対して体内のNa量が少ないことを示している。その調節には、Antidiuretic hormone(ADH)、腎でのNa排泄が関係し、ADH活性が低Na血症と強く関係している2。ADHの分泌刺激は、大きく1.血漿浸透圧、2.循環血液量、3.その他に分けられる3。1.血漿浸透圧; 視床下部の浸透圧受容器/細胞が血漿浸透圧の上昇に反応しADHの分泌と口渇を制御している。2.循環血液量;大動脈弓・頸動脈洞などの高圧循環系と心房を含む低圧循環系に、それぞれ、動脈圧受容体反射、心肺圧受容体反射が存在し、動脈圧の低下、血液量の減少でADHの分泌を起こす。心不全の低血圧時にもADHの分泌が生じる。3.その他; 吐き気や痛み、ストレス、様々な薬物でADHは分泌される。
ヨーロッパ集中治療医学会を含む3学会合同の低Na血症に対するガイドライン2では、急性低Na血症の急性とは記録で辿ることができるデータを基に48時間以内に発生したものを急性とし、それ以外を慢性と分類している。記録がない場合も原則慢性低Na血症として扱う。これは、24~48時間で脳細胞が低Na血症に対して耐性を形成し、急激なNa補正は浸透圧性髄鞘崩壊症候群(ODS)を引き起こす可能性のためである。また、そのガイドラインでは、急性低Na血症はその濃度の低さではなく、脳浮腫を示唆する症状がある時には、原因検索よりも緊急に対処することを推奨している。
本講演では、低Na血症の症例を提示し、低Na血症の診断について概説を行う。
1. Funk GC, et al. Intensive care medicine 2010; 36: 304-11. 2. Spasovski G, et al. European journal of endocrinology 2014; 170: G1-47. 3. Guyton AC, JE Hall JE:”ガイトン生理学”第11版:御手洗 玄洋 監訳.エルゼビア・ジャパン.pp374-377, 2010