[SY3-3] 薬剤管理のリスクマネジメントにおけるICU常駐薬剤師の役割
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集中治療病棟(以下、ICU)における薬剤関連エラーの19%は有害事象の発生につながるといわれており、特に注意が必要である。ICUでは緊急性から薬剤を配置薬として使用している施設もあり、その場合薬剤部調剤室での調剤・監査過程がない。また病態変化の多いICU患者では、薬物療法の頻回な再評価が必要である。したがって、薬剤を安全かつ有効に使用するためにも薬剤師がICUへ常駐し、指示薬剤のチェックや、個々の病態に最適な薬剤の選択、投与量の設計を行うことが、極めて重要である。
広島大学病院(以下、当院)ICUは2名の薬剤師が専従で勤務している。薬剤師は病棟スタッフステーション中央のコミュニケーションを取りやすい場所にて指示チェックを行っており、薬剤について迅速に提案・質問・情報共有・ディスカッションできる体制となっている。2016-2017年の他スタッフからの質問件数は3892件(医師:2066件、看護師:1826件)と多く、医師の質問は投与量設計や薬剤選択、看護師の質問は配合変化などが多かった。
また、薬剤師の薬剤リスクマネジメントに関する取り組みとして、日本病院薬剤師会は薬剤師が薬物療法に関与し、患者の不利益(副作用、相互作用、治療効果不十分など)回避・軽減した事例を「プレアボイド」と定めて収集している。当院は2名の薬剤師が患者を分担せず、すべての患者をダブルチェックする体制をとっている。これにより副作用発現や投与量設計などを漏れなくチェックしている。2016‐2017年に当院ICU・救命センター・HCUで薬剤師が行ったプレアボイド件数は556件であり、そのうち過量投与の回避など副作用未然回避例が322件、薬剤過小投与・必要な薬剤の追加など治療効果向上に寄与した例が227件であった。プレアボイドからみられるように、薬剤使用の多いICUでは潜在的な薬剤エラーのリスクは多く、薬剤師の介入する余地が大きい。
さらに、薬剤投与エラーを防止する仕組みの一つとして、当院では薬剤エラーの多い注射剤配合変化の対策として、頻用薬剤について配合変化表を作成し、薬剤師不在時に他のスタッフが配合変化の可否をチェックできるようにした。その結果、ルート閉塞インシデントの減少傾向が認められた。また、KClなど濃度・投与速度に注意が必要な薬剤、溶解方法等に注意が必要な薬剤について一覧の作成や、カテコラミンなどの組成一覧を作成し、組成を統一することで投与量間違いなどのエラーを防止している。
本発表では上記の当院の薬剤リスクマネジメントに対する薬剤師の取り組みを紹介し、今後の展望を述べる。