[SY6-2] 重症病態における蛋白投与を重視した急性期栄養管理法
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敗血症などの重症病態では、神経-内分泌系の賦活、サイトカインなどの炎症性メディエーターが代謝変動をきたし、異化亢進に伴う生体機能の低下、易感染性が起こるとされている。重症病態の改善には侵襲制御が第一であるが、 その後のICU-acquired weakness(ICUAW)をはじめとする Post-Intensive Care Syndromeの予防には早期リハビリテーションと適切な栄養管理が重要である。適切な栄養介入は、異化亢進に伴う生体反応を制御し、免疫の維持・向上だけでなく予後の改善効果が示されている。近年、重症患者の栄養管理において、蛋白投与の重要性が注目されている。至適蛋白投与量に関する強いエビデンスはないものの、日本版重症患者の栄養療法ガイドラインで1~1.2g/kg/日、ASPEN/SCCMガイドラインで1.2~2.0g/kg/日の蛋白投与が推奨されている。しかしながら、実際に1.2~2.0g/kg/日の蛋白投与を実現するのは難しい。その要因として、急性期栄養管理における至適投与エネルギー量に関する推奨が、侵襲早期においてはエネルギー消費量より少ない投与量を目標としていることが挙げられる。NPC/N比が100-150の一般的な経腸栄養剤を用いた場合、侵襲早期には蛋白投与量は非常に少なくなっている危険がある。加えて、本邦では重症患者管理においてAKIの有無にかかわらず血液浄化法(Blood purification : BP)を急性期に施行する症例も多く、BPからの蛋白喪失に留意する必要がある。BP中の栄養療法を考える場合、BPの方法、浄化量に応じて、各栄養素がどのような動態を示すのかを理解しなければ、適切な栄養管理は行えない。我々は、敗血症や長期間の低栄養などの重症病態だけでなく、血液浄化療法やECMOなどの特殊治療にも対応しうる重症患者栄養アルゴリズムを策定し、急性期栄養管理を行っている。特に蛋白投与に関しては、経腸栄養を主体に経静脈栄養を併用して、栄養管理開始7日程度で1.5g/kg/日、BP施行時は1.7~2.0g/kg/日を目標に管理を行っている。本発表では、実際の症例を元に我々の重症患者栄養アルゴリズムを紹介するとともに、当院ICUでの栄養管理実態調査を行ったので報告する。