第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

シンポジウム

[SY8] シンポジウム8
RRSに期待される医療安全との連携ー次世代に向けた新しい流れー

2019年3月2日(土) 08:45 〜 10:45 第6会場 (国立京都国際会館1F スワン)

座長:新井 正康(北里大学医学部附属新世紀医療開発センター・集中治療医学), 藤谷 茂樹(学校法人 聖マリアンナ医科大学救急医学)

[SY8-7] RRSデータの振り返りとM&Mでの対応策

山森 祐治1, 藤原 辰也1, 金井 克樹1, 佐藤 弘樹1, 石飛 奈津子1, 北野 忠志2, 西尾 万紀3 (1.島根県立中央病院 救命救急科, 2.島根県立中央病院 集中治療科, 3.島根県立中央病院 看護局)

(はじめに)RRSの目的は院内の予期せぬ院内死亡数や予期せぬICU入室患者を減らすことと言われている。当院では2015年から本格的にRRSの運用を開始した。2017年に2年間のデータを解析しその有効性を評価したので発表する。さらにRRS運用開始後継続的にM&Mカンファレンスを行い症例に応じて必要な対応策を講じてきたが、その結果とあり方についても検討した。(データの振り返りとその評価および対策)2015,16年のRRSデータベースと、2013年から2016年までのICUデータベースから後ろ向きに調査した。ICU入室患者の比較検討の際に、2013,14年をRRS導入前(pre)、2015,16年を導入後(post)とした。群間の比較は単変量解析で行なった。RRSの年間要請数は2015年208件、2016年182件であった。Pre(n=1945)とpost(n=1909)の比較で、院内発生のCPA数の推移及びその転帰に有意差はなく、予期せぬICU入室数及びその予後に関しても有意な変化は認められなかった。予期せぬICU入室患者(n=269)では、予期した入室患者(n=1682)と比較して、年齢、APACHE2スコア、予測死亡率、実死亡率いずれも有意に高く、在室日数は有意に長かった。予期せぬICU入室患者でRRS関与あり(n=58)となし(n=211)の群で比較したところ、RRS関与ありの群では、予期せぬICU入室に関わっていた割合が多く、高齢、在室日数が長いという結果であった。これらの評価から、予期せぬICU入室患者は重症度が高く、予後は不良であることが確認されたが、当院のRRSの活動ではその数を減らすまでの効果が現れていないことが判明した。その後この原因を検索すべく運用に関するアンケート調査を行ったので、その結果を併せて報告する。(M&Mについて)当院ではRRS起動症例は医療安全推進室に報告することになっており、症例によっては事例検討会やM&Mカンファレンスを行なっている。RRSの年間要請数は2015年208件、2016年182件、2017年302件であった。開始後の3年間で事例検討会は合計70回、多職種によるM&Mカンファレンスは合計19回、それぞれ行っていた。それらの振り返りから具体的な対応策が導かれたのは10件、症例に関する部署別教育に繋がったのが7件、部署内での対応の改善が検討されたのが8件であった。当院ではRRSの要請件数は増加傾向であり、その活動に関しては院内で浸透している印象がある。しかしながら事後検証から問題点を抽出しその対策案を検討し、改善策を策定・周知するまでに至ることが少ないことが判明した。今後は事後検証会の開催方法の検討、具体的な改善策の立案、さらにはそれを院内に周知する方法などの再検討が必要と考えている。