第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

シンポジウム

[SY9] シンポジウム9
敗血症患者の低体温をどのように扱うか?

2019年3月2日(土) 10:20 〜 11:50 第7会場 (国立京都国際会館1F Room E)

座長:小林 忠宏(国立大学法人山形大学医学部附属病院救急科), 中嶋 康文(関西医科大学麻酔科)

[SY9-3] 敗血症患者における体温異常と臨床的特徴、初期治療および臨床転帰:The FORECAST study副研究

久志本 成樹, 日本救急医学会 多施設共同試験特別委員会 (東北大学大学院医学系研究科 外科病態学講座 救急医学分野)

敗血症患者における体温異常は原因検索のための診断や治療法の変更へとつながる徴候となるが、発熱と低体温の臨床的意義は異なる。発熱と重症化および予後不良との関連は明らかでないが、低体温は10~20%の敗血症患者に合併し、重症化と予後不良に関連する。しかし、体温異常と背景因子、初期診療および転帰との関連は明らかでない。本研究においては、敗血症患者における体温異常が重症度と転帰に与える影響を明らかにすることを目的とした。方法:前向き登録研究-日本救急医学会FORECAST study事前登録副研究としての後向き研究である。登録されたsevere sepsis患者のうち初診時体温記録のある症例を対象として、体温カテゴリー<36℃, 36~38℃, >38℃の3群に分類して比較検討した。結果:severe sepsis患者のうち1143例が解析対象であり、<36℃, 127例;36~38℃, 565例; >38℃, 451例であった。3群を比較すると、年齢:75 (69-83), 73 (64-81), 72 (62-81)、BMI: 21.0 (18.3-24.5), 21.5 (19.0-24.6), 22.3 (19.3-25.1)が異なり、<36℃群では敗血症性ショックが高頻度であるが(75.6%;62.5%;59.2%)、血液培養陽性は低率であった(52.0%;53.8%; 65.2%)。<36℃群では3時間バンドル達成率が低く(56.3%; 60.8%; 71.1%, p=0.003)、広域抗菌薬投与開始が遅延した。<36℃群では退院時死亡率が高く(32.3%; 22.5%; 21.3%, p=0.015)、生存退院患者における転院が高率である。>38℃群を基準とした未調整オッズ比は1.76(1.134-2.732)であった。結論:敗血症患者の低体温は非低体温患者とは異なる臨床的特徴を有するとともに、転帰不良を予測する。低体温を呈する敗血症患者では敗血症バンドル遵守率、とくに広域抗菌薬投与の遅れと関連する可能性があり、十分な注意と迅速な蘇生を意識すべき患者群であるもとを思われる。