第46回日本集中治療医学会学術集会

講演情報

ワークショップ

[WS2] ワークショップ2
(ICU機能評価委員会JIPADWG企画) JIPAD四方山話2019

2019年3月3日(日) 08:45 〜 10:15 第7会場 (国立京都国際会館1F Room E)

座長:内野 滋彦(東京慈恵会医科大学附属病院集中治療部), 熊澤 淳史(堺市立総合医療センター集中治療科)

[WS2-3] JIPADブレイク前夜~論文量産に向けて解決すべき課題~

岡本 洋史 (倉敷中央病院 集中治療科)

 ナショナルデータベースの意義の一つとして、「得られたデータを用いた研究により新たな知見を得る」というものがある。本邦のナショナルデータベースであるJapanese Intensive care PAtient Database (JIPAD)参加施設の中には、この大きなデータベースを用いた研究を目的として参加されている施設もあるだろう。他国のナショナルデータベースを見てみると、Australian and New Zealand Intensive Care Society (ANZICS)、Intensive Care National Audit & Research Centre (ICNARC)からは、現在までにそれぞれ51編、208編の論文が投稿されており、新たな知見を得るという意味でのナショナルデータベースの有用性が窺い知れる。JIPADも他国と比べるとまだ症例数は少ないが、2014年の症例集積開始以降、既に合計7万を超える症例を集積しており、来年度にはついに10万例を超えると想定される。JIPADデータを利用した研究量産に向けての最初のステップとして、まずはデータを利用可能な形として参加施設の皆様に提供する必要があるが、1) 医療情報というプライバシー性が極めて高い個人情報を保護するためのデータ規約整備、2) 参加施設のデータ利用申請からデータの配布方法までのルール作り、3) データの利用者の範囲の設定、4) Authorshipの設定といった課題が残されており、そのデータ提供という目的を達成出来ていない。目下これらの課題解決に向けて議論を繰り返しており、来年度頭にはこれらの課題が解決され、10万例を超えるデータが利用可能となる事を目指している。また、これらの課題が解決した後も、JIPAD事業を継続可能なものとするための組織作りや資金源獲得といった課題に対しても他のナショナルデータベースや他国を参考にしながら最適解を模索していく必要がある。本演題では、発表時点でのデータ利用に関するルール・規約、JIPADデータの利用申請から利用までのプロセスを提示し、データの利用が可能となった後、どのような研究が可能なのか、他国の先行研究や本邦でのパイロット研究の内容を紹介する。また、ANZICS、ICNARCとの現時点での体制的な違いを明らかにしつつ、JIPADのさらなる発展および論文量産化への道筋を考察する。学会中の皆様からの意見も踏まえ、最終的なデータ利用に関するルール・規約を決定した上で、来年度からのデータ利用・論文量産体制に向けて引き続き取り組んでいきたい。