第46回日本集中治療医学会学術集会

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ワークショップ

[WS2] ワークショップ2
(ICU機能評価委員会JIPADWG企画) JIPAD四方山話2019

Sun. Mar 3, 2019 8:45 AM - 10:15 AM 第7会場 (国立京都国際会館1F Room E)

座長:内野 滋彦(東京慈恵会医科大学附属病院集中治療部), 熊澤 淳史(堺市立総合医療センター集中治療科)

[WS2-4] 診療の質改善に資するデータベースを目指して ~JIPAD施設別レポートの可能性~

一原 直昭 (東京大学 大学院医学系研究科 医療品質評価学講座)

 診療レジストリの主要な意義の一つに、診療の質の評価と改善支援が挙げられる。
 JIPADには、ICU入室症例の入室経路、診断/併存疾患/術式、生理状態、といった、各症例のリスクを規定する主要な因子と、ICU在室日数や死亡といった診療のアウトカムに関する情報が含まれている。これらを用いて、特定施設における患者集団の有するリスクを加味した上で、診療プロセスおよびアウトカムについて臨床的視点に合致する評価指標を提供することができれば、各施設における診療の見直しと改善につながる可能性がある。JIPADの症例数・参加施設の数および多様性は増加しており、各施設にとっての比較対象となる集団は、すでに十分に確保されている。JIPADでは2017年から、各参加施設へのフィードバックとして、施設別年次レポートを配布している。これはPDF形式で配布されているほか、2018年からは、ウェブサイト上でも閲覧可能である。
 ここでは、既存のJIPAD施設別年次レポートの内容を概観した上で、施設別レポートの有用性を高めていくために、どのような内容が考えられるかを例示し、今後の方向性を検討する。
【層別化】JIPAD施設別年次レポートには、登録症例集団全体と当該施設の間で、死亡率やICU在室日数といったアウトカムの比較が掲載されている。このように多様な症例を包括して評価する指標も重要である一方、問題点を把握し具体的な改善につなげる上では、より個別的な臨床シナリオ別の指標が必要である。この目的で、主病名別のアウトカム等の比較の例を示す。ここで、病態およびリスクの均一性、当該施設症例数、参照集団イベント数に基づき、ベンチマーキングに適した病態を抽出する。
【マッチング】JIPAD施設別年次レポートでは、当該施設患者集団と対照集団の重症度の差に対処する目的で、標準化死亡比が使用されている。ここではまず、この定義と使用上の留意点について述べた上で、これに加え、複数項目にわたり、当該施設患者集団と類似した集団を対照とするベンチマーキングの例を示す。
【重症度スコアを基準とするベンチマーキング】JIPAD参加施設にとって、他のJIPAD参加施設と自施設の比較は関心の高い点であり、診療見直しのきっかけとする上での効果は高いと考えられる。一方、APACHEをはじめとする重症度スコアはより多くの症例で作成・検証されており、弁別能の点ではJIPAD症例集団にも適合することが示されている。これら二つの比較対象を組み合わせることが有効と考えられる。
【セルフサービスレポート】いわゆるBIツールのような画面を用い、参加施設が様々な角度からデータを検証できる環境の提供準備が進んでいる。実現すれば、診療レジストリとしては世界初の機能となる。
 参加者と共に、診療改善支援の観点からJIPADの可能性を考える場としたい。