第41回日本集中治療医学会学術集会

セッション一覧

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Pro-Con 1 腹臥位呼吸管理は重症ARDS患者の予後に有用である

2014年2月27日(木) 09:30 〜 10:00 第5会場 (国立京都国際会館 1F Room E)

座長:長田直人(宮崎大学医学部 地域医療学講座)

従来、胸部CT画像所見で背側肺野に強い濃度上昇を示す下側肺障害では、腹臥位呼吸管理は様々な面で概ね有用と考えられています。両側肺野に浸潤陰影を呈し、P/Fが200以下であるARDSでは、この呼吸管理が酸素化能または予後を改善するかは、未だ賛否両論があると思います。予後を改善したとしても、長時間の腹臥位呼吸管理は、種々のカテーテル類や気管チューブの抜去の危険性がありえます。また、最近の傾向であるlight sedationではさらに注意する必要があると思います。マンパワーも必要です。Pro-Conのそれぞれの演者の説得力のある意見交換を楽しみたいと思います。

Pro-Con 2 HFOVは重症ARDSに有効な治療法である

2014年2月27日(木) 10:00 〜 10:30 第5会場 (国立京都国際会館 1F Room E)

座長:松川周(宮城県立こども病院 麻酔集中治療科)

重症のARDSに対する治療成績は、未だ飛躍的な改善がみられているとは言い難い。その理由の一端はARDSの成因が単一でないことにもあるが、治療手段としての人工呼吸がかえって傷害的に働くことも関係している。過大な圧を肺に加えることが病態を悪化させる可能性があることは今や常識と言って良いが、ではどのような換気様式が治療成績向上に寄与するかについては、議論のあるところである。人工呼吸の一形態としての高頻度振動換気(HFOV)がARDS治療に有効であるとする報告がみられるが、真に有用か否かについては未解明の部分も多い。本Pro-Conでは人工呼吸治療に熟達したお二人の先生に、HFOVのARDSに対する有効性を肯定する立場と、否定する立場に分かれて議論をして頂く予定である。お二人の討議が、HFOVのARDSに対する有用性について、知識を整理し理解を助ける機会になることを期待している。

Pro-Con 3 敗血症性ショックの急性期治療にScvO2は必要である

2014年2月27日(木) 10:30 〜 11:00 第5会場 (国立京都国際会館 1F Room E)

座長:堂籠博(独立行政法人国立病院機構 鹿児島医療センター)

混合静脈血や中心静脈血のガス分析で測定される酸素飽和度は一定の条件であれば心拍出量と連動して変化し、集中治療領域ではその有用性も指摘される。しかしながら、敗血症症例の場合では混合静脈血酸素飽和度自体が上昇することも観察され、その値の解釈は複雑となる。同時に、(1)必要なカテーテル留置にかかるコスト、(2)留置による感染の助長などの項目も視野に入れての適応判断が重要となる。今回のPro-Con部門での議論の中では、その適応や測定値の判断等も含めての議論が行われ、その際に数々の意見が交わされることを期待する。同時に、これらの過程自体が本測定に関しての各学会員の理解がさらに進み、日常の診療や研究にも寄与することも期待する。

Pro-Con 4 急性期の重症患者のCRRTではCHDFよりCHFの方が有用である

2014年2月27日(木) 11:00 〜 11:30 第5会場 (国立京都国際会館 1F Room E)

座長:鷹取誠(広島市立広島市民病院 麻酔集中治療科)

「急性期の重症患者に対するCRRT」はわが国においてはいわゆる non-renal indication を含むニュアンスでとらえられることが多いであろう。ただ単に溢水や電解質補正に対するCRRTであればそのモダリティが議論されるほどの問題ではなく、本セッションの議論の中心はおのずと重症患者の病態に踏み込んだCRRTの意義というところにおかれるはずである。一般にCRRTの有用性自体に定まった見解が得られていない現状でそのモダリティについて議論するのは非常に難しいと思われるが、2名の論客を得て、その有用性のメカニズムにまで踏み込んだ議論が行われることが期待される。おそらくモダリティの違いに関するRCTは稀有であり、また様々な条件の違いのため論文を比較するのも困難であると思われるが、臨床経験や基礎的な知見も含めて将来につながるような議論にしていきたいと考えている。

Pro-Con 5 自発呼吸患者のサポートはPAV がPSV に勝る

2014年2月27日(木) 11:30 〜 12:00 第5会場 (国立京都国際会館 1F Room E)

座長:鈴川正之(自治医科大学 救急医学教室)

PAV(Proportional Assist Ventilation:比例補助換気)は、患者の呼吸努力の一定の割合を補助する呼吸モードで、一定の値で補助するPSV(Pressure Support Ventilation:圧支持換気)の数年後に開発され、理論的に優れていること、患者の受け入れが良いことは報告されているものの、非侵襲的換気での使用において挿管率、死亡率に差がないことがランダムコントロール研究で報告されており、設定の煩雑さ等もあって普及はしてこなかった。2000年以降、呼吸メカニクスを自動測定し、設定を容易にした新しいPAVも開発されているが、PSVとの比較ではこれまでと同じような見解が多いように考えられる。今回はこの、理論的に優れ同調性もいいものがどうしてPSVよりも優れた結果を出せないのかといったもやもやしたところを、専門の先生方にクリアにしていただけることを期待している。

Pro-Con 6 ICU患者の急性期投与エネルギー量は20~25 kcal/kgも必要ない

2014年2月27日(木) 13:20 〜 13:50 第5会場 (国立京都国際会館 1F Room E)

座長:国元文生(群馬大学医学部附属病院 集中治療部)

生体へのエネルギー基質供給は、外的エネルギー基質と体内組織から動員される内的エネルギー基質の和となっている。健常時は、エネルギー消費量に相当するエネルギー基質を補充すれば、組織構成成分の異化を生ずることなく生体機能を維持することができる。しかしながら、重症患者は侵襲刺激により遊離されるメディエーターや副腎皮質ホルモンなどの作用により異化反応優位の代謝動態となっている。このような患者への消費エネルギー相当分の外的補充は、実質的にはエネルギー基質過剰供給となり患者にさらに代謝ストレスを加えることになる。ICU患者の外的投与エネルギー目標量はその病期病態により異なると予想される。非侵襲期には有用となるエネルギー消費量の実測値や計算式による予測値も侵襲期にはもはや外的エネルギー投与量設定の指標とならない。このDebateが急性期栄養管理に示唆を与えてくれることを期待する。

Pro-Con 7 ECMO センター(ECMO の集約化)は必要である

2014年2月27日(木) 13:50 〜 14:20 第5会場 (国立京都国際会館 1F Room E)

座長:谷川攻一(広島大学大学院医歯薬保健学研究院 救急医学)

我が国では心原性ショック、重度の低酸素血症そして難治性VF心停止例等に対して多くの施設で経皮的心肺補助装置(PCPS)が使用されてきた。その目的は危機的な状況に陥った一時的な呼吸循環補助であり、致死的状況の緊急回避手段としての位置づけである。特に心肺停止での使用経験は極めて豊富であり、SAVE-Jでは世界に誇る治療成績を収めている。一方、新型インフルエンザでは数週間にわたる長期的なECMOの有効性が報告された。我が国でも多くの施設においてPCPSの経験に基づいて対応してきたが、残念ながら新型インフルエンザの治療成績(生存率)は欧米と比較して低い。既に欧米ではECMOの実施施設を集約・センター化し治療成績の向上を図ってきた。そこで今回の企画では、PCPSのように多くの施設でECMOを行うのか、或いは少数のECMOセンターを整備し患者を集約するのか、どちらが患者の利益となるのかについて、それぞれの立場から討論する。

Pro-Con 8 ネーザルハイフローはNPPV の代替療法となりうる

2014年2月27日(木) 14:20 〜 14:50 第5会場 (国立京都国際会館 1F Room E)

座長:丸山一男(三重大学大学院医学系研究科 麻酔集中治療学)

鼻から、加温・加湿した酸素を高流量で吸入させるhigh-flow nasal oxygen therapy(NHF)は、咽頭内の圧を上げ、機能的残気量を増やす効果がある。酸素吸入で対処できる軽症から中等症の呼吸不全患者を対象にした研究では、マスクによる酸素吸入に比べて、NHFで動脈血酸素化は改善、不変の双方が報告されている。小規模の研究では、NPPVへの移行率はNHFと高流量マスクで差を認めていない。一方、高流量マスクで改善しない場合に、NPPVの前にNHFを行う研究デザインでは、NHFによりNPPVに移行せずに済む症例が存在する。呼吸不全に対する治療としてNHFとNPPVで、気管挿管による人工呼吸への移行率に差があるかは、大変興味深い。さらに、術後管理として、鼻カニューラやマスクによる酸素吸入と比べて、NHFによる、術後呼吸不全の発生率の低下、ICU入室日数の短縮などの効果も検討課題であろう。

Pro-Con 9 敗血症性ショックの初期輸液にはリンゲル液よりもアルブミンを優先して用いる

2014年2月27日(木) 15:00 〜 15:30 第5会場 (国立京都国際会館 1F Room E)

座長:江口豊(滋賀医科大学 救急集中治療医学講座)

Surviving Sepsis Campaign Guidelines 2012では、重症敗血症・敗血症性ショックの初期輸液として晶質液を推奨(Grade 1B)し、最低30ml/kgの晶質液(部分的に等価のアルブミンでも可)(Grade 1C)で 、大量の晶質液を必要とするような場合にはアルブミンの使用を考慮してもよい(Grade 2C)とされている。一方、日本版敗血症診療ガイドラインでは、初期輸液には晶質液だけでなくアルブミン液と赤血球輸血を考慮する(2B)となっている。アルブミン使用の根拠として、SAFE studyで重症敗血症では28日死亡率に有意差はないもののアルブミン投与群の方が死亡率は低く、重症敗血症/敗血症性ショックを対象にしたメタ解析ではアルブミン投与群の死亡率は有意に低かった。しかしながら、アルブミン投与を優先するかの報告はないことから具体的はアルブミン使用法について議論していく。

Pro-Con 10 重症患者でグルタミン負荷は必要である

2014年2月27日(木) 15:30 〜 16:00 第5会場 (国立京都国際会館 1F Room E)

座長:定光大海(国立病院機構大阪医療センター 救命救急センター)

本セッションでは、重症患者の栄養管理におけるグルタミン負荷の是非を議論したい。経口摂取されたグルタミンは小腸から吸収され腸管上皮細胞や腸管付属リンパ節細胞の主要なエネルギー源となり、小腸粘膜の保護やバリア機能に関連する。重症患者の感染対策からみた腸管保護という理論的背景からもグルタミンを強化した経腸栄養の意義がこれまで指摘されてきた。一方で、急性呼吸不全による人工呼吸患者に対する我が国の栄養管理ガイドライン(人工呼吸2012)では、熱傷や外傷患者以外に推奨する根拠は乏しいとされ、カナダから報告された最近のRCTでも多臓器不全を伴う重症患者の早期グルタミン投与は死亡率をむしろ高めたとする報告(N Engl J Med 2013)がある。ここでは、重症患者でグルタミン負荷は必要であるという立場とそうでない立場から二人の演者にご発表いただき議論を深めたい。

Pro-Con 11 重症患者の経腸栄養は胃内投与より幽門後投与を第一選択とすべきである

2014年2月27日(木) 16:00 〜 16:30 第5会場 (国立京都国際会館 1F Room E)

座長:中川隆(愛知医科大学病院 高度救命救急センター)

重症患者の栄養管理は呼吸・循環管理と同様に,あるいはそれ以上に重要であることは論をまたない。低栄養状態は人工呼吸器離脱を遅らせ,喀痰排出困難から肺炎へと進展し,低アルブミン血症は創傷治癒を遷延させる。また抗体産生低下など免疫能低下をきたす。可能な限り経静脈栄養より経腸栄養が望ましいことは自明としても,胃内投与と幽門後投与ではどちらが優れているのであろうか。胃内投与で食道逆流やmicroaspirationの可能性が高いという報告は納得しやすい。一方ではどちらの方法であっても,肺炎,ICU在室日数そして死亡率に差がないとも言われる。チューブ留置は胃内投与の方が容易であることも事実である。また早期経腸栄養開始により感染症合併の減少が期待できる点を考慮すると,幽門後投与に拘るあまりチューブ留置に難渋し経腸栄養の開始が遅れることは避けるべきである。両者の白熱の議論に注目したい。

Pro-Con 12 a-EEGは成人集中治療においても必須である

2014年2月27日(木) 16:30 〜 17:00 第5会場 (国立京都国際会館 1F Room E)

座長:三宅康史(昭和大学医学部 救急医学)

新生児ICUにおけるaEEGの使用はすでに常識となった感がある。ただ集中治療領域における成人への応用となると、症例数、解析のための知識、必要な機器・機材など十分とはいえない。しかし集中治療を要する蘇生後脳症、重症脳血管障害症、その他の原因による脳機能不全例では、脳機能の現状と変化、抗痙攣薬の必要性と効果をreal-timeに把握する必要がある。その目的の達成のためとはいえ頻回のCT室への移動やベッドサイドでの検査は容易でなく、多くの症例で鎮静・鎮痛薬が持続投与され深昏睡状態にある。aEEGにより、正常、異常(spike、burst-supression、flat、low-voltage他)の変化を継時的に測定し、遅延なく解析・対処することが、現状のCT、MRIなどの画像診断、単発の脳波測定、ABRやSEPなどの脳幹反応など現状の管理に加え、有益か否か、その理由はなにかを、コストパフォーマンスも含め、2人の演者の方にディベートしていただきます。