第95回日本医療機器学会大会

講演情報

一般演題

手術室・ICU

手術室・ICU

[100] 手術室内吸入麻酔薬汚染低減のための工夫

生田 義浩1, 石村 達拡1, 今山 史教2, 吉富 晃子2, 山本 達郎2 (1.熊本大学病院 中央手術部, 2.熊本大学病院 ME機器センター)

当院では手術室に環境ガスモニタを設置しており,約20分間隔で全手術室内の環境監視をおこなっている.測定値を検討すると,全身麻酔時の手術室内への吸入麻酔薬漏出は,麻酔導入時等の麻酔回路開放時に起きることが多い.当院でおこなった研究で,5種類の麻酔器を対象に,麻酔導入時のマスク換気を人工呼吸器を作動させる方法と手動換気をおこなう方法の2種類に想定した.それぞれ新鮮ガス流量を6L/分,3L/分に変化させ,回路解放後に回路先端から漏出するセボフルラン濃度を測定し,漏出までの時間を比較した.その結果,人工呼吸器を作動させた場合,作動後であれば手動換気にしても速やかに回路先端からセボフルランの漏出があり,手動換気の場合,手動換気終了時に換気バッグを萎ませた状態であれば全器種で人工呼吸器作動時よりも漏出時間は延長し,新鮮ガス流量3L/分で麻酔回路解放30秒以内であれば吸入麻酔薬漏出しない麻酔器が多いことを報告した.すなわち,人工呼吸器作動後は,回路解放時に手動換気にしても速やかに吸入麻酔薬は漏出し,手術室内汚染が発生するため,新鮮ガス流量を停止する等の対策が必要である.環境汚染に関して,1999年米国職業安全衛生局は,低減するには新鮮ガス流量を停止するか,回路先端を閉じることを推奨している.麻酔器の新鮮ガス流量を停止する場合,再開忘れで低酸素血症などの危険が生じる可能性がある.そのため今回は回路先端を閉じる工夫を紹介する.大人用マスク装着時と小児用マスク装着時の回路先端径を計測し,3Dプリンタを用いて,回路先端に合う形状のそれぞれ直径15mmと12mm,長さ150mmの円柱型の棒を臨床工学技士に依頼して作製してもらった.麻酔回路解放時に,このデバイスで回路先端に蓋をすることで,回路先端からの吸入麻酔薬の漏出は防止できる.この方法は,麻酔科医以外でも施行可能であり,着脱は簡便で手術室内吸入麻酔薬汚染低減に有用であると考える.