第95回日本医療機器学会大会

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Oral presentation

手術室・ICU

手術室・ICU

[103] 小児集中治療室の改修で経験した絶縁異常

長江 祐吾, 新 秀直 (東京大学医学部附属病院)

【はじめに】
既存の入院棟を改修した際,オープン直前に絶縁監視装置が異常な挙動を示し,対応を要したため,その経験を報告する.
【経緯】
改修は既存建物の2階1フロアで,もともとあった一般病棟2つを別の棟に引っ越した後,骨格のみを残した状態からおこなった.構造上の制約はあったが,電源設備については,ある程度要望通りに設計が可能だった.臨床工学技士も設計段階から参加していた.竣工後の電気設備点検も部分的に立ち合い,結果も閲覧し,特に問題は見当たらなかった.ところが,開設直前の現場見学の際,臨床工学技士が絶縁監視装置の異常な動きに気付き,解決できなければ開設できない状況になった.
【現象と対策】
ほぼ無負荷の状態でインジケータが閾値を超え,アラームを表示していた.また,漏れ電流が上昇,下降する現象も確認された.この状況は医療機器や電子カルテによる負荷の有無で大きく変化せず,設備上の問題と考えられた.
精査した結果,ベッドサイドまで別々に配線された,非接地配線と接地配線の2系統のアースがベッドサイドのシーリングペンダント内で1点に接続されており,これを分離にすることで解消された.また,絶縁状態を監視するための高周波信号のチャンネルが,隣接する絶縁監視装置で同一だったため,チャンネルを別にすることで測定される漏れ電流が小さくなった.
【考察】
今回の現象はJIS T1022:2018 病院電気設備の安全基準に則った点検方法では特定することができず,また,設計についても病院電気設備の設計・施工指針にも完全には明記されていないことから,専門業者でも経験することが少ない稀な事例であると考えられ,広く共有することが重要と考えた.アース線の距離やシールド,トランスの仕様など,供給業者,医療機関のスタッフにも深い知識と経験が必要であることを実感した.