第95回日本医療機器学会大会

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Oral presentation

検査機器

検査機器1

[15] 手術用剪刀の切れ味定量評価に関する検討

小野寺 健太1, 小幡 大輔1, 真下 泰1, 高橋 昌宏1, 黒田 聡2, 相川 武司2, 野沢 義則3 (1.JCHO札幌北辰病院, 2.北海道科学大学, 3.八戸市立市民病院)

【研究背景】
器械器具の科学的な根拠に基づく耐用年数または耐用回数を決定するためには定量評価が必要となる.しかし,手術用剪刀の切れ味評価は使用者の感覚に依存した主観的な評価である.そこで,切れ味を定量的に評価可能な方法実現に向け研究をおこなっている.
【目的】
先行研究では剪断荷重測定装置を試作し,剪断荷重の定量計測が可能であることを確認した.本報告では実際の切れ味(定性的評価)が剪断荷重値に反映しているか比較検討した.
【方法】
大学で解剖実習にて使用した,切れ味が混在している手術用剪刀(25本)の剪断荷重値を計測した.次に,被験者1,被験者2が主観的評価により切れ味のいい剪刀(A群)と切れ味の悪い剪刀(B群)に分類し,剪断荷重値に反映しているか確認した.また,剪断荷重値の経時変化を検討した.なお,試験片はラテックスゴムシートとし、剪断荷重値は剪断した荷重値[N]から被剪断物なしで剪刀を開閉させた荷重値[N]を減算した値とした.
【結果】
被験者1は25本のうち5本,被験者2は7本切れ味が悪いと評価した.それぞれの剪断荷重値の中央値を比較すると,被験者1のA群は約0.5N,B群は約0.7N,被験者2のA群は約0.6N,B群は約0.5Nであった.被験者2ではA群よりもB群の方が剪断荷重値は高い値を示した.
【考察】
A群よりもB群の方が剪断荷重値は高い値を示したものもあり,剪断荷重値が切れ味の定性的評価を反映するわけではないことが示唆された.また,剪断荷重値の経時変化により剪刀刃先の状態が反映されたと考える.
【まとめ】
剪断荷重による剪刀切れ味の定量評価実現に向け,剪断荷重計測値が実際の使用者の感覚を反映しているか検討をおこなった.必ずしも,剪断荷重値の大きさが切れ味の定性的評価を反映するわけではないことが示唆された.