第95回日本医療機器学会大会

講演情報

一般演題

検査機器

検査機器2

[16] KIRCの基礎的研究

―焼灼組織の超音波診断装置による凝固能評価方法の考案―

中島 章夫1, 保科 紀葉1, 戸川 真寿1, 窪田 博2 (1.杏林大学保健学部臨床工学科, 2.杏林大学医学部付属病院 心臓血管外科)

【背景・目的】
我々は,これまで不整脈や感染性心内膜炎等の治療に適応可能な赤外線ハロゲンランプ組織凝固装置(以下KIRC:Kyorin infrared coagulator)の開発,およびその組織凝固能の評価法に関する基礎的検討をおこない,シミュレーション等定量的な評価方法を確立してきたが,臨床では目視にて凝固能を評価していることが課題であった.目視では組織深部の観察が不可能なため,凝固深さを定量的に確認することが困難である.一方,ラジオ波焼灼療法等では組織凝固能を超音波診断装置にて評価している.そこで,本研究では超音波診断装置を用いて,KIRCによる焼灼組織の凝固能(熱変性状態)を焼灼組織表面から評価する手法の考案を目的とした.
【方法】
実験当日に摘出・臓器冷却保存液を用いて冷蔵運搬した食肉用ブタ心筋から照射切片を作成し,Flatプローブで30%~60%(10%毎)各出力で焼灼後,超音波観察用に作成した特殊ジグを用いて超音波診断装置(ARIETTA E70:HITACHI)で凝固範囲の観察をおこなった.また,焼灼前後各出力条件での超音波画像をImageJで2値化した画像データから凝固範囲を抽出し,輝度を階調としたヒストグラムを作成した.
【結果・考察】
焼灼前後の輝度の平均値を比較すると,出力40%の平均輝度が非凝固部分では14.7,凝固部分では60.0となり,凝固部分の輝度が上昇した.また統計処理の結果,出力40~60%で焼灼前後の有意差が認められた.
【おわりに】
本研究により,超音波診断装置を用いた凝固能評価が臨床使用で目視の代用として新たな凝固能評価の手法として有効である可能性が示唆された.今後,焼灼中の超音波画像をリアルタイム動画として取得し,焼灼中輝度変化を継時的に観察することで臨床での有用性がより向上すると考えられる.