第95回日本医療機器学会大会

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一般演題

検査機器

検査機器2

[19] フルーガル・プチイノベーション:最小資源で最大インパクトを生む聴診補助気泡緩衝材

石北 直之1,2, 木阪 智彦3,4 (1.国立病院機構 新潟病院 臨床研究部 医療機器イノベーション研究室,2.ストーニー, 3.広島大学TRセンターバイオデザイン部門,4.インド工科大学デリー校生命工学センター)

【背景】
簡便で非侵襲ながら得られる情報が多い「聴診」は,極めて重要な検査である.だが,体の小さな新生児や,痩せ形で皮下脂肪が少ない患者など,聴診面と患部に隙間が生じると音が聴き取りにくいことがあった.従来は,小さな聴診器で対処していたが,振動面積が小さい分音が小さい欠点があった.また,電子聴診器で音を増幅させる方法は,電源を要し,高価なため,普及には至っていない.
【目的】
低コストで電源不要な聴診補助具を開発する.
【解決法】
患部と聴診面の隙間を気泡緩衝材で埋める補助具を発明した.本発明は2枚の樹脂製シートからなり,一方のシートを聴診膜大に成型した突起の中に空気を封入し,緩衝材の機能を有する.他方の平らなシート面には,着脱容易な接着剤が塗布される.試作は,梱包資材メーカである川上産業の協力を得た.
【実験方法】
聴診器の耳管に小型コンデンサーマイクを嵌入固定し,聴診教育用音源発生装置からループ再生された正常心音を録音,各心音図を比較した.
【結果】
1粒のサイズは,縦35mm×横35mm×高さ15mm,重量は約0.1gであった.聴診膜面に気泡緩衝材を装着すると,あらゆる凹凸面にフィットし,聴診膜全体が振動した.心音図は,通常時と比較して約6倍拡大した.
【考察】
気泡緩衝材自体に音の増幅効果はない.心音図比較で音が拡大した現象は,音源発生装置が平面であることと,聴診膜がリムから1段へこんでいることによる極僅かな隙間が,聴診補助具により埋められた結果である.隙間を埋める素材は,他に液体,ゲル,泡などが挙げられるが,補助具の重みが体表面の振動を抑制させてしまうこと,破損時の汚染,製造コストなど鑑みると,空気が最も適していた.
【結論】
聴診補助用気泡緩衝材は,フルーガルなイノベーションと言える.あらゆる体形に対応可能な他,脱衣しなくても充分音が良く聴こえるようになるため,例えば健診時に大いに役立つだろう.