第95回日本医療機器学会大会

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[21] レーザ測距センサを用いた一次救命講習会用胸骨圧迫評価ツール

堀 純也 (岡山理科大学理学部応用物理学科臨床工学専攻)

心肺蘇生ガイドラインが2015年に変更された際に,一次救命処置(BLS)における胸骨圧迫について,目標数値が細かくなった.具体的には,胸骨圧迫の深さは「5cm以上」から「5 cm以上で6cmを超えない」となり,1分間あたりの圧迫の回数も「100回以上」から「100~120回」となった.一般市民向けのBLS講習会で,このような細かな評価をおこなうためには,高額なシミュレータを用いる必要がある.一方で,多数の受講者がいる講習会では,そのような高額なシミュレータを多数用意することは困難なため,安価な訓練用マネキンが用いられているが,定量的な評価はできないのが問題である.われわれは,以前に加速度センサを利用した胸骨圧迫評価ツールを試作したが,胸骨圧迫の深さの評価まではおこなっていなかった.本研究では,胸骨圧迫手技の評価機能がない心肺蘇生訓練用のマネキンに取り付けることによって胸骨圧迫の深さ,圧迫の速さ,胸骨圧迫比率(CCF : Chest Compression Fraction)を評価できるツールを作製した.
今回作製した評価ツールは,940nm Class 1レーザを光源とした測距センサ(VL53L0X,STMicroelectronics)をI2C通信でシングルボードコンピュータ(Raspberry Pi 3)に接続し,胸骨圧迫の深さを計測するものとした.胸骨圧迫の際の深さの時間変化をグラフにして可視化し,さらに1分間の胸骨圧迫回数および,CCFを表示するものとした.なお,計測プログラムはPythonで作成し,GUI化にはPyQtを用いた.
本研究で作製したツールを胸骨圧迫手技の評価機能がない訓練用マネキンに装着したところ,胸骨圧迫の速さ,深さ,CCFを評価できるようになった.一般市民向けの講習会では,1分間に100~120回の範囲にリズムがある音楽やメトロノームのリズムで胸骨圧迫の速さを体感してもらっているが,このツールを利用すれば,定量的に胸骨圧迫の手技を評価することが可能となる.