第95回日本医療機器学会大会

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一般演題

電波管理

電波管理

[47] 医用テレメータの簡易スペクトラムアナライザ機能は電磁環境評価に応用可能か

石田 開 (神奈川県立産業技術総合研究所 電子技術部 電磁環境グループ)

【緒言】
近年の医用テレメータの受信機(患者モニタ)には簡易的なスペクトラムアナライザ(以下SA)機能が搭載されている.本機能は医療機関における電磁環境測定に応用できる可能性がある.しかし,この機能の測定精度は一般に明らかになっていない.本研究では本機能の精度を実験的に調査し,評価することを目的とした.
【方法】
医用テレメータの送信信号を,減衰器を介して患者モニタに入力した.その際,簡易SA機能にて当該チャネルの受信強度を測定し,さらにSA実機との測定結果と比較した.また,比較的隣接したチャネルの無変調信号を2波同時に入力した際の各チャネルにおける表示値の精度を測定した.さらに,患者モニタから発生する電磁ノイズによる影響を評価するため,筐体周辺の空間分布を測定した.
【結果】
簡易SA機能にて測定された送信信号強度は,SA実機で測定した結果と高い相関を認めた.2波の信号が入力された際には,相互変調成分と考えられる周波数成分が,該当チャネルに出現することが確認された.一方,一部の機種ではこの送信信号および相互変調周波数以外においても受信強度が増加した.患者モニタからは425 MHzにピークを有する電磁ノイズが,背景雑音よりも高い強度で確認された.
【考察およびまとめ】
本研究結果より,簡易SA機能における受信信号の振幅表示値は一定の測定精度を有すると考えられる.一方,帯域幅を持たない無変調信号であっても,相互変調成分以外が出現した受信機もあり,受信側が何らかの理由でサイドローブ成分と誤認識した可能性が考えられる.SA実機のように詳細なパラメータ設定は不可能であるが,簡易的に院内の電磁環境評価などには十分に適用可能である.一方,患者モニタ自身が発生する電磁ノイズは一種の自家中毒症状の可能性も考えられるため,簡易SA機能による電磁環境評価の際には,本体とアンテナを十分に離隔する必要があると結論づける.