第95回日本医療機器学会大会

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Oral presentation

滅菌

滅菌2

[64] 蒸気滅菌バリデーションの再検証

―第1報―

三木 智恵美 (留萌市立病院 手術・中央材料室)

【背景】
滅菌保証とは,再使用可能な医療機器(以下RMD)の滅菌保証水準(以下SAL)の達成と適格性(安全性,品質,性能)の担保にある.昨年本学会誌に,蒸気滅菌バリデーションの一環としてSALの達成を滅菌工程開発から検討し報告したが,この方法は市販されている滅菌済み医療機器の滅菌工程開発用途を意図しており,医療現場におけるRMDの再生処理にはふさわしくないことに気付いた.医療現場では,添付文書,取扱説明書,RMDメーカからの口頭回答により得た再生処理方法に従い,監視,確認,記録し,達成する.今回,この方針に基づき使用中の医療機器の滅菌条件について見直したところ,知見を得たので報告する.
【方法】
使用中の医療機器について,添付文書,取扱説明書,RMDメーカ直接問合せにより,滅菌条件の有無について確認した.
【結果・考察】
滅菌条件は滅菌物が滅菌できる条件であり,滅菌装置に設定する条件ではない.医療現場に必要なのは滅菌条件であり,適格性の担保にはさらに上限温度と上限時間も必要である.100例中,滅菌条件あり34例(上限温度・時間あり15例),滅菌条件なし5例,「医療施設で有効性が立証された滅菌条件で滅菌をおこなってください」の記載が61例であった.RMDの材質,構造などの特性を知らない医療現場で滅菌条件は開発できない.つまり「立証された滅菌条件」の達成はできない.また,複数回使用されることを想定し厚労省の許可を経て医療機器として製造販売されている以上,添付文書などに滅菌条件が明記されていることは当然であると考える.よって,先の61例は記載なしと同等とする.この結果,今回の調査では66%の添付文書などに滅菌条件の記載が無かった.
【結論】
滅菌条件が記載されていないRMDは,再使用不可能な医療機器であり,それを知らずに使用した場合,患者の生命を脅かす恐れがあるという観点から,RMDメーカに対し現状の記載不備状況の改善を要望する.