第95回日本医療機器学会大会

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Oral presentation

呼吸循環

呼吸循環

[88] 植込み型補助人工心臓とAED併用における肺モデルの検討

木浦 千夏子, 芥田 航基 (神奈川工科大学工学部臨床工学科)

【背景】
補助人工心臓は心臓移植までのバイパスを目的として開発されたが,生涯植え込んだ状態で社会生活が送れるようになってきている.目的が変わったことにより,開発当初の承認では審査されなかった点について評価する必要がある.
補助人工心臓植込み患者が外出中に何らかの要因により倒れた場合,一般市民の救命に対する意識が高いことから,また補助人工心臓が植え込まれていることを一般市民が判断できないことからAEDを使用する可能性がある.そこで,植込み型補助人工心臓とAEDを併用した際の安全性に対する評価が求められる.医療レギュラトリーサイエンスの観点から評価法を検討する.
【方法】
補助人工心臓植込み患者の胸部を単純なモデルにし,除細動電流を通電した際の電流密度分布を有限要素法により解析した.肺・心臓・補助人工心臓で構成したモデルと肺がない心臓・補助人工心臓のみのモデルを作成した.導電率は,心臓0.94 S/m,補助人工心臓の金属部分5.8×106 S/m,人工血管部分1.0×10-16 S/mとし,肺の導電率を0.03 S/m,0.62 S/mとして電流密度分布を解析した.
【結果】
肺モデルの有無により電流密度分布に大差はなく,多少の違いがみられた.肺モデルがないと心臓と血液ポンプへの電流密度が低下する傾向がみられた.
【考察】
肺モデルの有無により電流密度分布に多少違いがあることが確認できたが,肺モデルの導電率を変えても電流密度分布は大きな変化はみられなかった.このことから,電流密度分布は,肺モデルの導電率にはあまり大きな影響は受けないことが示唆された.生体の臓器は複雑な形状である.今後,臓器に合わせたモデルで解析をおこなった際に電流密度分布に変化が現れた場合,肺モデルの形状を検討する必要があることが示唆された.