第95回日本医療機器学会大会

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Educational Lecture Next Generation

教育講演・次世代へつなぐ6 医療機器安全管理の現状と未来

座長:真下 泰(JCHO札幌北辰病院)

[教育講演・次世代へつなぐ6] 医療機器安全管理の現状と未来

脇田 邦彦 (旭川赤十字病院 医療技術部 臨床工学部門)

与えられたお題は「次世代へつなぐ…」であるが,次世代へつなぐにも,今,我々が果たしている役割が十分なものであるかどうかという評価をおこなわなければ未来へはつなげることはできない.
医療法で医療機器安全管理責任者は「医療の安全を確保するための指針の策定,従業者に対する研修の実施その他の当該病院における医療の安全を確保するための措置を講じなければならない.」とある.院内にある多種多様なすべての医療機器の管理計画を立てて,安全に使用できるように研修会を開催して教育した上で,安全に使用してもらうという責任を担っているわけである.そして,その責任は院内のみならず,在宅医療機器にまで及んでいる.さらに医療機器は病棟部門のみならず外来部門の各科にも専門的で特殊な機器が存在しており,さらには検査部門や放射線部門にも多数の機器が存在する.医療機器安全管理責任者は普段臨床工学技士が関わっている機器のみならず,院内にあるすべての医療機器について責任が及ぶと考えなければならない.まずはそういう意識で責任を担っているかが重要である.
今まで医療機器安全管理責任者を担ってきて最も重要だと思うことはやはり教育である.安全に運用するためにはやはり知識が必要である.しかも業務多忙の中でいかに短時間でポイントを掴んだ教育を施せるかが重要であると感じている.当院では2019年度に実施した研修会の開催実績は169回,受講者延べ人数は1,921名であるがこれでも十分であるとは考えていない.さらに充実させるには何をすべきかを考えなければならない.
昨今,国を挙げて業務改善・負担軽減が叫ばれている.臨床工学技士の業務として呼吸・循環・代謝における臨床業務の他,医療機器の点検・整備業務がルーティンワークとなっているが,資格がなくてもできる点検・整備業務に多くの時間を費やすことに疑問を感じている.
当院の臨床工学部門の業務内容の比率は臨床業務7割,機器管理業務が3割という配分になっており,ベッドサイドで医師,看護師らと共に臨床業務をおこなうことに重きを置いている.演者は将来の展望として資格がなくてもできる点検・整備業務は臨床工学技士でなくても構わないのではないかと考えている.もちろん管理計画や実施状況を管理する責任は果たさなければならないが,医療機器の安全性や整備方法を充分に教育された技術者を養成し,点検・整備を担ってもらうことができればもっと臨床の場で医療の質を上げるはたらきができるようになると考えている.それには医師や看護師からリスペクトされるに値する専門的な知識を身に付けるべきであり,医療職にとって知識が最大の武器となることを自覚しなければならない.
次世代においても臨床工学技士が活躍するには臨床的に質の高い専門的な知識を持ち,医師と対等にディスカッションができるレベルの臨床工学技士を育てていくことが医療の質と安全性を高めるためには重要であると考えている.