第95回日本医療機器学会大会

講演情報

パネルディスカッション

パネルディスカッション2 最新テクノロジーによる医療従事者教育の現在と未来

座長:髙橋 典彦(北海道大学),釈永 清志(富山大学)

[PD2-2] 心臓外科手術訓練用シミュレータの開発,ならびにベンチャー起業によるDry labスキームの確立に向けて

朴 栄光 (イービーエム㈱)

【Dry lab開発の背景~バイオエンジニア,パイロット,起業家~】
 筆者は早稲田大学理工学硏究科に入学したての修士大学院生であったが,指導教授より文部科学省知的クラスター創成事業「患者ロボットの開発」(2004-09年)を一任された.効率的かつ効果的Dry labを実現するためには,シミュレータ,評価技術,教育コンテンツ,およびこれらの国際標準化,専門医制度への組み込み,Dry=Wet=Clinicalの連携を確立する必要があると考え,日本が術式の普及において世界的にリードしているOff-Pump冠動脈バイパス手術(以下OPCAB)を訓練対象として定めた.また,高度な専門技能によって顧客の命を預かるパイロットと心臓外科医に類似性を認め,航空分野におけるパイロット育成システムを参考にするため,実際に2006年米国ホノルル国際空港にて飛行機操縦士免許を取得し,自身をモデルとした飛行訓練実験を継続している.
 対象がOPCABのみだとしても,このOff-JTのシステム全体を確立するためには,大学における学術的硏究活動のみでは不足であり,2006年には工学的アプローチによるDry lab開発をおこなうイービーエム社(Engineering Based Medicine)を創業した.
 2013年,ふくしま医療福祉機器開発事業補助金において「心拍動下冠動脈バイパス手術の大規模迅速評価システムの開発~Fukushima heart Schoolを創る~」が採択され,シミュレータ,および周辺技術の開発がおこなわれた.さらに2016年9月に福島駅前においてFIST(Fukushima Institute of Surgical Training)を竣工するに至った.現在,福島ではOff-JTが原子力災害からの復興の一助となるべくシミュレータ・訓練メソッドの開発に勤しんでいる.
【目的】
 Dry lab開発の事例を共有することで,外科領域全体のDry labについて議論を深めたい.
【内容】
1)Pilot trainingとSurgical training
2)Off-Pump冠動脈バイパス手術訓練シミュレータの開発
3)評価方法(縫えるモデルによる血流解析,ビデオ評価,定性的評価)
4)訓練効果の事例
5)他の外科領域への横展開