第95回日本医療機器学会大会

講演情報

パネルディスカッション

パネルディスカッション2 最新テクノロジーによる医療従事者教育の現在と未来

座長:髙橋 典彦(北海道大学),釈永 清志(富山大学)

[PD2-4] 臨床医学の献体利用を推進する専門人材の養成

七戸 俊明 (北海道大学病院 医療機器開発推進センター/消化器外科II)

2012年に臨床医学の教育及び研究における死体解剖のガイドライン』(ガイドライン)が公表されたことにより献体を使用した臨床医学の教育研究が実施可能となり,現在多くの医科大学で献体を使用した手術手技研修(CST: cadaver surgicaltraining)が実施されている.ガイドラインでは,CSTとともに新たな術式の研究や医療機器の開発も可能としているが,国内での実施例はほとんどなく,国内企業が新規に医療機器を開発する場合には海外に赴き,遺体による前臨床試験をおこなっている現状がある.
 医療機器の研究開発(R&D)を目的とした献体利用は,臨床応用をゴールに定めた「臨床研究」であることから,これを国内で実施する際には,ガイドラインの遵守に加え,文部科学省・厚生労働省の定める「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」の遵守も必要である.また,実施においては最大限の倫理的な配慮が必要なだけではなく,無報酬の献体制度に配慮した高度な利益相反マネジメントも欠かせない.さらに,実験動物を使用した研究や臨床試験との相違点とそれぞれの利点を十分に理解したうえで,適切な研究計画を立案しなくてはならない.
 R&Dにおける献体利用の推進には,上記の原則に加えて,関連法規,感染防御,知財マネジメント等にも精通する人材の養成が必要であることから,北海道大学では献体を使用した医療機器開発のリエゾンの核となる専門人材の育成を目的として,京都大学,千葉大学と連携し,文部科学省 課題解決型高度医療人材養成プログラムとして,医師のみならず工学系の研究者,企業の研究担当者等にも受講の対象を広げた履修証明プログラム「臨床医学の献体利用を推進する専門人材養成プログラム」を開設している.さらに初学者に対しては,AMED「次世代医療機器連携拠点整備等事業」にて,R&Dにおける献体使用の概要に関する講義と見学プログラムを用意している.詳細については,ホームページに掲載しているので参照されたい.
(https://cast.med.hokudai.ac.jp/#introduction)