第95回日本医療機器学会大会

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Symposium

シンポジウム2 医療現場でコミュニケーションツールとしてのスマートフォンはどこまで安全か?

座長:加藤 伸彦(北海道情報大学),久保 仁(東京大学)

[シンポジウム2] スマートフォン(iPhone)導入による院内通信環境の整備と臨床工学技士業務の改善

原田 学 (東京慈恵会医科大学附属病院 臨床工学部)

ICTの進化により病院も日々変化し,患者がより良い医療サービスを受けられるようになった.その変化の一つに「病院内での携帯電話の使用」がある.病院はこれまで多くのエリアで携帯電話の使用を制限し,通院・入院の患者に不便を強いてきた.そもそも,病院内で携帯電話の使用を制限していたのは,公共スペースの通話マナーの問題もあるが,携帯電話から発する電波が医療機器に悪影響を及ばすと考えていたのが理由である.現在国内で使用されている通信方式では,医療機器に近づけてもほとんど影響を与えないとわかってきた.2014年に電波協議会より「医療機関における携帯電話等の使用に関する指針」が発表され,「影響が懸念される医用電気機器から1メートル程度離すことを目安とする」といったガイドラインが示された.この指針に先立ち東京慈恵会医科大学先端医療情報技術研究講座では,2013年にNTTドコモと協力し,当時使用されていたPHSと現在使用されている携帯電話が医療機器にどれくらい影響を及ぼすかについて検証した.臨床工学部でも,実際のスマートフォンを用いて,電波状況の異なる2か所で血液浄化装置に対する影響の有無と影響が無くなる距離を測定した.携帯電話の周波数によるが,電波状態が良好であれば,医療機器に携帯電話を2~5センチメートルまで近づけなければ電磁波による影響は認めないという結果であった.この検証結果を受け,これまでのPHSによる院内インフラを更新し,2015年10月に3,224台の医療機関として世界でも類を見ない規模のiPhone導入に踏み切った.スマートフォンの魅力は様々なアプリが使えることである.臨床工学部ではアプリを活用し業務改善に繋げている.今回,iPhone導入に至るまでの臨床工学部の関わりとiPhoneアプリを活用した業務改善の詳細について報告する.