第95回日本医療機器学会大会

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Special lecture

特別講演1 薬機法改正で動き出す、医療現場のUDI―医療用バーコード・電子タグのキホンから進むべき方向性まで―

座長:根本 裕司(ミズホ株式会社)

[特別講演1] 薬機法改正で動き出す,医療現場のUDI

田中 大祐 (厚生労働省)

2019年(平成31年)3月19日,第198回国会に薬機法改正案が提出された.この法案は継続審議となり,秋に開会された第200回国会において2019年(令和元年)11月27日に可決・成立し,12月4日に公布された.世の中が平成から令和に移り変わるのに時を同じくして,薬機法が改正され,薬機法の中に医薬品の安全対策の観点からバーコード表示を義務化する規定が盛り込まれた.患者,医療関係者に,より良い,より安全な医療が実現できるよう,令和とともに第一歩を踏み出したと言えよう.
近年,医療を含むさまざまな分野においてICTが活用されるようになってきた.バーコードの活用はICT化の促進にも資することから,日本では1999年に医療機器業界の取り組みから始まり,2007年の「規制改革推進のための3か年計画」の閣議決定や2008年の医政局経済課長通知「医療機器等へのバーコード表示の実施について」などを受けバーコード表示の標準化が進められてきた.医薬品では,医薬品コード表示の標準化やバーコード等の活用が2002年に発表され,翌年,医療安全推進総合対策でも取り上げられた.
バーコード表示の整備が進むにしたがって,メーカから医療機関までの流通管理,物流の効率化,コスト削減など流通改善のために活用が広がってきた.医薬品においては,有効期限,製造番号などの変動情報を含んだバーコード表示が流通記録の管理に活用されることにより,流通段階での把握管理をより迅速かつ確実におこなうことが可能となり,メーカが製品の回収など安全対策上の重要な責務を適切に遂行する上で有効な手段となると期待されたことから,厚生労働省は2016年に関連3課長の連名で「医療用医薬品へのバーコード表示の実施要項」の一部改正について通知した.医療機器では,世界の主たる医療機器規制当局が参加するIMDRFにおいて,UDIガイダンスが発行され,流通の効率化,医療安全,トレーサビリティ確保を目的として,バーコード表示を積極的に使用する方向性が明確化された.
このように,流通の管理を中心としたバーコードの付与・利活用については普及が進んできているものの,医療安全への活用を含めた医療機関へのバーコード利活用の導入については,先進的な取り組みをおこなっている医療機関等において,使用の記録の管理,医薬品の取違え等による医療事故の防止を通じた医療安全の向上などへのバーコードの活用が広がってきているものの,まだ道半ばという状況である.平成から令和にかけて国会で審議され改正された薬機法では「高い品質・安全性を確保し,医療上の必要性の高い医薬品・医療機器等を迅速に患者に届ける制度」を目指し,安全対策の充実の一環として,バーコード表示の義務化の規定が盛り込まれており,今後の医療現場における医薬品・医療機器の安全対策,医療安全の充実に向けた厚生労働省の取り組みについて紹介したい.