第95回日本医療機器学会大会

講演情報

特別講演

特別講演3 AI、IoT技術を活用した新しい医療システム開発

座長:南 正人(大阪大学)

[特別講演3] AI、IoT技術を活用した新しい医療システム開発

洪 繁 (慶應義塾大学医学部坂口記念システム医学講座)

近年,AIやIoT技術を使った製品やサービスの進歩が著しい.1990年代のインターネットの一般化に始まり,2008年に発売されたiPhone3Gが現代のスマートフォンを活用したすべての製品,サービスの始まりとなった.携帯電話網を用いる移動通信についても,もうすぐ一般に第5世代(5G)の移動通信網が使えるようになり,高速かつ低遅延の移動通信が可能になることで,これまでは不可能であった様々なサービスを購入することが可能になると考えられている.つまり我々の生活は,最先端のIoT,AI技術を活用した製品,サービスを安価に購入できることで,以前に比べて格段に便利,かつ安全な世の中になりつつあると考えることができる.AI,IoT技術の中でも深層学習を中心とした機械学習技術の進歩により,コンピュータやスマートフォンで高速に画像処理ができるようになったが,これはあたかも生物の進化の過程での視力の獲得になぞらえて,コンピュータが視力を獲得した,ともいわれる.これらの人工知能(AI)技術によって,われわれが普段使用する製品,サービスには,今後も新しい機能,サービスがどんどん追加され,さらに便利な世の中が実現していくことが予想される.
一方,医学・医療の領域においても,医療以外の領域に比べると進歩はゆっくりではあるものの,AI・IoT技術の導入によって日々進化し続けている.特に,CTやMRIの技術をもとにした画像診断技術については,10年単位で振り返ってみると大きく進歩してきていることが実感できる.
慶應義塾大学医学部では,2017年4月に我が国の医学・医療AI研究の中心となるような研究拠点をつくるため,医学部だけではなく他学部も含めた学部横断的な研究組織として慶應メディカルAIセンターを設立し,医療AI研究の拠点として活動を開始した.さらに2018年度には,慶應義塾大学病院が内閣府 戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「AIホスピタルによる高度診断・治療システム」に採択され,医療AI技術実証検証病院の一つとして研究を開始している.慶應義塾大学医学部,病院では,SIPプログラム受託以前から,慶應メディカルAIセンターを中心に各研究グループ単位で,医療・医学AI技術開発をおこなってきたが,SIPプログラム採択後は診療科横断的,病院全体の医療システムのIoT化,AI化のため活発に研究開発が進んでいる.
本講演では,現在慶應メディカルAIセンターおよび慶應義塾大学病院で進めている医療IoT,医療AI技術についてその進捗の一部をご紹介させていただく予定である.