第96回日本医療機器学会大会

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Oral presentation

ものづくり/新技術

ものづくり/新技術

座長:沖野 晃俊(東京工業大学)

[34] 3Dプリント可能な人工呼吸器の開発と普及を目指す

「COVIDVENTILATOR」プロジェクト

石北 直之1, 木阪 智彦2, 前田 祐二郎3, 藤田 隆行4, 中島 孝1 (1.国立病院機構新潟病院, 2.広島大学, 3.東京大学医学部附属病院 トランスレーショナルリサーチセンター, 4.㈱ニュートン)

新型コロナウイルス感染症の世界的な流行に伴い,人工呼吸器の需供バランスに深刻な支障が生じた.この打開策として注目されたの
が,3Dプリント技術であり,物流の停滞を根本的に解消することが期待される.プロジェクトの原点は,2011年に発明した簡易吸入麻酔器「嗅ぎ注射器(R)」に遡る.特許出願を経て㈱ニュートンの技術協力のもと開発し,2013年より宇宙伝送を目指し開発を進めてきた.本プロジェクトでは,コア技術を公開し,世界中の3Dプリンタを活用することで,低廉な人工呼吸器の普及を目指した.成功の鍵は,信頼できる現地協力者と3Dプリンタの確保である.3Dプリンタは,機種が多様化し,医療機器領域において十分な品質の出力が担保できる機種の同定には至らない.そこで,メディアを通じ国内外の3Dプリント協力者を募り,造形サンプル画像を集めた.その多くは一般ユーザであり,我々の提案する人工呼吸器モデルを製造できる高い品質であった(n = 247, 安全基準充足率:75%).しかし,製品の性質上,製造段階での改造や初期不良が重大な医療事故を招くリスクがあり,十分な品質管理のみならず高度管理医療機器としての薬事承認が各国毎に求められることから,設計データを公開する方針を改め,主体となるプロジェクトチームが研究と申請資金調達や各国承認申請を進める方針とした.幸い,本プロジェクトは,経済産業省・AMEDの事業に採択され,より安全で高機能な3Dプリント可能な人工呼吸器の開発研究を一気に加速させることができた.本年度内に国内承認される見通しが立ったものの,現行法を遵守すると,3Dプリントによる分散型製造のメリットを十分生かすことができない.法的にも科学的にも根拠ある形でUniversal Health Coverageに寄与するよう,チーム一丸となり課題を解決したい.