第96回日本医療機器学会大会

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Oral presentation

滅菌3

滅菌3

座長:加藤 美加(大阪大学)

[73] 鋼製器具の不動態皮膜形成についての検証

酒井 大志1, 深柄 和彦2, 齋藤 祐平2, 久保田 英雄3, 市橋 友子4, 大川 博史5, 富山 典子6 (1.越谷市立病院 看護部 中央滅菌室・手術室, 2.東京大学医学部附属病院 手術部, 3.東京医科歯科大学病院 材料部, 4.聖路加国際病院 物品管理課 中央滅菌室, 5.日本ステリ㈱, 6.順天堂大学医学部附属順天堂東京江東高齢者医療センター 看護部 手術室)

【背景と目的】
鋼製器具の機能をより長く維持するために,不動態皮膜の形成が重要である.一般的には,熱と酸素によって成長・強固になるとされ,繰り返し蒸気滅菌をおこなうことが有用であるといわれている.しかし本当に蒸気滅菌が有用であるかの基礎的な研究はおこなわれていない.そこで,医療現場で使用されることの多いSUS304(膿盆など)・SUS420(ハサミ・鉗子など)のステンレス板テストピースを用いて,不動態皮膜形成に与える影響について検証をおこなうこととした.
【方法】
ステンレス板テストピースSUS304 n=10・SUS420 n=10に,以下の処理を施し不動態皮膜の形成状態を測定する.
不動態化処理条件:134℃・18分(前真空工程3回・乾燥工程35分)の条件で蒸気滅菌をおこない,1回・5回・10回処理後に測定した.
測定方法:不動態化処理前および処理後のステンレス板テストピースに対し,ステンレスチェッカー(ケミカル山本社製)を用いて,最大電位差および電位差0.2V以上の不動態化域の維持時間を測定し不動態皮膜の形成状態を評価した.
【結果】
不動態化処理前と1回・5回・10回処理後の最大電位差および不動態化域の維持時間の平均±標準偏差を示す.
SUS304群:処理前(0.57V±0.024・49.5秒±7.41),1回(0.54V±0.026・53.1秒±6.83),5回(0.57V±0.026・73.1秒±11.3),10回(0.57V±0.022・92.9秒±8.37)
SUS420群:処理前(0.19V±0.044・0.1秒±0.3),1回(0.23V±0.038・1.3秒±1.0),5回(0.33V±0.069・2.1秒±1.04),10回(0.42V±0.097・3.2秒±1.46),であった.
最大電位差の値は,SUS420群で有意に増加したが,SUS304群では大きな変化は認められなかった.不動態化域の維持時間の値は両群ともに増加したが,SUS304群で著しい増加が見られた.
【結論】
本検証によりSUS304群・SUS420群それぞれ変化の特徴は異なるが,両群ともに蒸気滅菌での加熱処理が,不動態被膜形成につながっていることが示唆された.さらなる検討が必要である.