第96回日本医療機器学会大会

Presentation information

Oral presentation

滅菌3

滅菌3

座長:加藤 美加(大阪大学)

[74] 高圧蒸気滅菌時のケミカルインジケータ使用による器材着色問題

~その解決アプローチ~

村越 智恵美, 深柄 和彦, 大川 博史, 山神 良太, 齋藤 祐平, 室屋 充明 (東京大学医学部附属病院 手術部)

【背景】
化学的インジケータ(以下CI)は滅菌工程のモニタリングツールとして必須である.また,「滅菌現場における滅菌保証のガイドライン2015」によれば,手術に供される器材包装内に必ずCIを入れることが勧告されている.一方で,特定の原材料から作成された器材では滅菌時にCIと接触すると着色されることがあり滅菌不良の原因となることが指摘されている.今回,手術に供する器材(クリップ,主にスチール製で表面がニッケルメッキ加工)を包装してCIを内包し高圧蒸気滅菌(AC滅菌)を条件135℃・20分にて施行したところ器材にCI由来によるとみられる着色を確認し滅菌不良となった事象に遭遇,その解決法を検討する機会があったので報告する.
【方法】
CI由来成分の器材への着色を回避するための解決法を探索するために以下のような検討をおこなった.すなわち,方法1)滅菌時間を4分に短縮して滅菌,方法2)CIの裏面を器材側に向けて内包しCIインジケータ成分が直接器材と触れないようにしての滅菌,方法3)製造元が異なるCIに変更しての滅菌,をそれぞれおこない器材の着色の状況について評価した.
【結果】
方法1および2では,滅菌器材への着色があることを確認した.方法3では使用した7種類のCI(タイプ4~6)のうち2種類のもので滅菌器材への着色がないことを確認した.
【まとめ】
滅菌時に起こりえる器材へのCI成分の着色の解決法としては,組成の違う同種同効器材への変更,あるいはCIを製造元が異なるものへの変更のいずれかが提案できる.前者は後者よりコストが著しく高くなるのが一般的である.本検証では同じ器材を滅菌しても使用するCIにより着色の有無があることが明らかになった.したがって,CI成分による器材着色が起きた時は,現在市場に流通している他のCIの中から着色が起きないものを見出すことにより問題解決を図れる可能性があることが示された.