[80] 透析シャント音の音響的特徴量と機械学習を用いた狭窄音のスクリーニング
【目的】
血液透析治療では,透析専門のスタッフにより血流雑音(以下シャント音)を聴診し血管狭窄をスクリーニングする官能検査がおこなわれている.しかし,正常音と異常音の判別には熟練が必要である.そのため透析専門のスタッフが同じ音を聴いても臨床経験の違いによってその診断が異なる場合も多い.筆者らはシャント音の周波数特性と拍動波形の持続時間の長さを特徴量に選び,マハラノビス・タグチ法(MT法)より血管狭窄を判別する手法を提案している.一方,従来研究では機械学習を用いたクラスタ分類による方法が提案されている.今回,同じ特徴量を使い機械学習モデルにより血管狭窄判別率を評価しMT法の結果と比較したので報告する.
【方法】
熊本赤十字病院腎センターにおいて血液透析スタッフのトレーニング用として作成されたトレーニング用CDから正常音8人分の32サンプル音と異常音14人分の60サンプル音を検証データとして使用する.シャント音はサンプリングレート8kHzでデータ長は8秒の聴診データである.シャント音の特徴量は周波数特性として6種類のメルケプストラム係数,および拍動波形データを時間軸で積算したヒストグラムから計算した確率密度分布の尖度と自己相関係数から計算した持続時間の長さに係る4種類である.3種類の機械学習モデルによる異常音の判別率をMT法の結果と比較した.機械学習では異常サンプル60を学習用29と判別用31に分け使用した.計算にはWolfram 社のMathematicaを用いた.
【結果とまとめ】
MT法,SVM,NN,Logistic回帰の判別率はそれぞれ,87%, 69%, 66%, 55%であった.MT法が最もよく,SVMとNNは同程度であった.総じて機械学習モデルの精度が低かったのは学習データが少なかったことが考えられる.しかし,熟練者の判別率は70-80%程度とされており機械学習で実用的な判別精度が期待できることが分かった.
血液透析治療では,透析専門のスタッフにより血流雑音(以下シャント音)を聴診し血管狭窄をスクリーニングする官能検査がおこなわれている.しかし,正常音と異常音の判別には熟練が必要である.そのため透析専門のスタッフが同じ音を聴いても臨床経験の違いによってその診断が異なる場合も多い.筆者らはシャント音の周波数特性と拍動波形の持続時間の長さを特徴量に選び,マハラノビス・タグチ法(MT法)より血管狭窄を判別する手法を提案している.一方,従来研究では機械学習を用いたクラスタ分類による方法が提案されている.今回,同じ特徴量を使い機械学習モデルにより血管狭窄判別率を評価しMT法の結果と比較したので報告する.
【方法】
熊本赤十字病院腎センターにおいて血液透析スタッフのトレーニング用として作成されたトレーニング用CDから正常音8人分の32サンプル音と異常音14人分の60サンプル音を検証データとして使用する.シャント音はサンプリングレート8kHzでデータ長は8秒の聴診データである.シャント音の特徴量は周波数特性として6種類のメルケプストラム係数,および拍動波形データを時間軸で積算したヒストグラムから計算した確率密度分布の尖度と自己相関係数から計算した持続時間の長さに係る4種類である.3種類の機械学習モデルによる異常音の判別率をMT法の結果と比較した.機械学習では異常サンプル60を学習用29と判別用31に分け使用した.計算にはWolfram 社のMathematicaを用いた.
【結果とまとめ】
MT法,SVM,NN,Logistic回帰の判別率はそれぞれ,87%, 69%, 66%, 55%であった.MT法が最もよく,SVMとNNは同程度であった.総じて機械学習モデルの精度が低かったのは学習データが少なかったことが考えられる.しかし,熟練者の判別率は70-80%程度とされており機械学習で実用的な判別精度が期待できることが分かった.