第96回日本医療機器学会大会

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ポスター演題

[P1] 超音波エラストグラフィを用いた筋肉の弾性評価

齋藤 秀悠, 杉野 繁一, 江島 豐, 山内 正憲 (東北大学大学院医学系研究科 麻酔科学・周術期医学分野)

【背景】
肩こりから膠原病まで筋肉がこわばる原因は多々あるが,筋肉の弾性を客観的に評価する方法はなかった.われわれは超音波エラストグラフィ(Acuson S3000®:Siemens Medical Solutions USA,Inc.)を用いて,麻薬,筋弛緩薬および神経ブロックによる腹直筋の弾性変化を評価し,有用性を検討した.
【方法】
当院倫理委員会承認を得ておこなわれた(2019-1-901,2020-1-904).2018年12月から2021年2月に全身麻酔を施行した59症例を前向きに検討した.未成年患者,神経筋疾患患者,筋弛緩薬アレルギーがある患者は除外した.全身麻酔導入前(phase1),麻薬(レミフェンタニル0.5mg/kg/分)投与開始5分後(phase2),筋弛緩薬(臭化ロクロニウム0.8mg/kg)投与後(phase3),手術終了後(phase4)に,筋垂直水平方向それぞれ3か所,計6か所の測定平均を比較検討した.エラストグラフィの有用性を評価するためphase1~3を比較した(Friedman検定).サブグループ解析として,硬膜外麻酔による効果範囲の筋弛緩作用を評価するため,全身麻酔単独群(GA)と硬膜外麻酔併用群(EA)を比較した(Wilcoxon符号付順位和検定,Bonferroni補正).腹部手術で硬膜外カテーテルを留置した症例では,閉創30〜60分前に0.75%ロピバカイン3mLを投与した.p<0.05を有意とした.Post hoc解析としてBonferroni補正下にWilcoxon符号付順位和検定を施行しp<0.01を有意とした.
【結果】
phase1~3で有意差を認めた(p<0.01).サブグループ解析で,GAではphase1と4で有意差なく(p=0.41),phase3と4で有意差を認めたが(p<0.01),EAではphase1と4で有意差を認め(p<0.01),phase3と4で有意差を認めなかった(p=0.20).
【結語】
超音波エラストグラフィは,筋肉の緊張,拘縮および弛緩の変化を,定性的かつ定量的に評価可能であると示唆された.また硬膜外麻酔により筋弛緩作用が得られることが示唆された.本研究は国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の資金でおこなわれた.