第96回日本医療機器学会大会

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ポスター演題

[PT14] 認知工学分野の視点から見た医療器具管理業務の改善提案

中野渡 寛之 (㈲東奥電気)

【背景】
弊社は2015年に医療事業へ参入して以降,一貫してダイレクトパーツマーキング(以下DPM)読取装置の開発をおこなっている.理由は,医療現場ニーズ勉強会において,ある病院の手術部を見学させて頂いた時に,手術で使用する医療器具の種類の多さに衝撃を受けたからである.以前私は,工業分野のヒューマンエラー防止(認知工学)を専門としていた.その経験上,医療器具管理の現場は,扱う部材の多様性と複雑性から,ヒトが手作業で管理できる限界を超えた状況に置かれており,タスク設計レベルで改善すべき点が数多くあると考えている.
【対策】
対策として,認知工学の視点からDPMを導入する利点を検討した.そのうち二つを紹介する.一つ目は作業の可視化.DPM管理は,いつ,誰が,何の作業をおこなったか,遡ることができる.可視化というと監視されるマイナスイメージも伴うが,私はその逆で,作業をする側もプラスになると考えている.なぜなら,ヒトは太古の昔から無意識に体内のエネルギー消費を温存する本能を持っており(無意識にラクをする方向に進む),第三者の適度な可視化があってこそ,作業をおこなうために望ましい意識水準を維持できるからである.さらに,可視化は自分自身で作業の振返り確認もできる.メリットの二つ目は作業の平準化.平準化とは,作業の方程式化によって委託できる仕組みを作ること.DPMを読取れば,データベースから器具管理に関する情報を引き出せる.その結果,看護師のタスクとされている器具管理業務を作業の質を落とさずに,少しずつ委託へ移していくことが可能となる.看護師の貴重なリソースは,もっと患者に近い看護師でなければできないタスクへ向けた方が病院にとってプラスになる.
【結言】
医療器具管理業務の改善を目的としたシステム導入は,タスク設計レベルから,手術部・材料部・委託業務・各部門連携の組織的な見直しも合わせて,長期的・総合的に検討して頂きたい.