[シンポジウム1] 医療機器メーカによる物流効率化やトレーサビリティ向上への取り組み
長期または短期の貸出しという形態をとった医療機器(特に整形外科分野)の物流においては,その高度化や効率改善,クライシスの回避などさまざまな課題があり,医療機器メーカ,ディーラ,医療機関,物流業者それぞれの立場で様々な取り組みがなされてきた.RFIDを用いた製品の個体情報の迅速な読取機能を活用した出荷および返却受け入れ,検品作業などの効率化が15年ほど前から一部の医療機器メーカで始まったが,それまで各社ばらばらであったRFIDタグのデータ格納方式について,2018年より米国医療機器・IVD工業会(AMDD)において業界内での標準化がおこなわれてきた.貼付されたタグに記録されたデータは単体ではなく関連する製品情報や物流に関わる情報と連携することでより大きな改善をもたらすため,AMDD所属の医療機器メーカでは国家戦略イノベーション創造ブログラム(SIP)を活用し,2020年から「医療機器流通情報プラットフォーム」や「物流共同化」などの業務モデルの構築の実証実験に取り組んできている.これらの取り組みはメーカから病院に至るまでのサプライチェーンにおけるトレーサビリティの可視化だけでなく,従来労働集約的であったそれぞれのタッチポイントにおける出荷,受入れ,検品作業等における生産性の向上や労働力不足の改善につながることが期待されている.