第97回日本医療機器学会大会

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Educational Lecture

教育講演2 医師の働き方改革とタスクシフト・シェア

〜手術室を中心に〜

Fri. Jun 3, 2022 4:50 PM - 5:30 PM 第1会場 (アネックスホール F201+F202)

座長:青木 郁香(公益社団法人日本臨床工学技士会)

4:50 PM - 5:30 PM

[教育講演2] 医師の働き方改革とタスクシフト・シェア

〜手術室を中心に〜

北本 憲永 (総合病院 聖隷浜松病院 臨床工学室)

手術室において、日々の医療機器の進歩はめざましく様々な医療機器が次々と導入される。その中で内視鏡外科手術装置や各種治療装置、手術中のナビゲーション装置、ロボット手術装置、整形外科関連のインプラントなど医師や看護師だけでは追従することが困難な状況となっている。臨床工学技士が医療機器を通し、医師や看護師をサポートすることは患者にとってもニーズであり、臨床工学技士を配置する施設が増加している。役割の分担は責任の分担でも有り、確実に医師をサポートすることで、医師の働き方改革とタスクシフト・シェアに対して一定の到達点までやり遂げる必要がある。医師の働き方改革に伴い、2021年法令改正や現行法でも実施が推奨される行為などが明確化され、臨床工学技士にもタスクシフト・シェアが期待されている。今回、医師・看護師の働き方改革に大きく繋がったと考える清潔野での補助業務、外科医を対象としたスコープオペレータ、麻酔科医を対象とした麻酔補助業務について紹介する。
①清潔野補助業務
清潔野に入るに以前に2008年医療機器業公正取引協議会より『立会いに関する基準について』が規定された。それに伴い整形外科のインプラントの業者立会いを病院内で規制する必要が発生した。インプラント業務の担い手として、材料工学や力学的な視点から臨床工学技士が適任と考え整形外科領域の外回り業務として参入した。当初教育は医療機器メーカからの事前レクチャーと模擬骨などを利用したシミュレーション、臨床の実際としては手術中に医師、医療機器メーカからOJTを受けた。現在も医師によってはメーカへ依存している症例もあるがインプラント手術の90%は臨床工学技士へ移行した。外回り業務において、臨床工学技士が器械出し看護師にインプラントの操作をペンライトで指示していた関係から、手術を円滑に進めるため臨床工学技士が器械出しをおこなう方が患者のためになると考え、整形外科全般の器械出しを看護師から臨床工学技士へ移行した。その結果、整形外科手術件数は同じでも並列手術が増加し、手術室の平均稼動率は向上、結果として手術終了時間が劇的に改善し、整形外科手術に関連するスタッフの働き方改革に繋がった。
②スコープオペレータ業務
内視鏡外科手術における内視鏡装置の清潔野でのカメラ保持と操作(スコープオペレータ)を外科医のタスクシフトとして業務を開始した。教育は外科医から直接録画映像を使用したレクチャーと臨床の実際で指導を受け実施した。実施する診療科は増加し2021年度までに2,500症例以上に対応した。医師に代わり実施することで手術時間がそのまま医師の働き方改革に直結している。日本臨床工学技士会では厚生労働省が指定する告示研修を開始した。外科医の視点を代行する内視鏡装置の構造や操作方法を理解した臨床工学技士が対応することで、良好な視野を提供し安定した手術が行われることが期待される。
③麻酔補助業務
麻酔科医に特化した麻酔補助業務を臨床工学技士から提案し開始した。6ヶ月間の麻酔科医からおこなわれる直接指導とOJT、日本麻酔科学会が主催している周術期管理チームの資格習得をおこなうことで卒業とした。法令改正に伴い静脈路の確保、薬剤の調節、抜針止血などが追加され、告示研修後に穿刺業務も開始した。臨床工学技士は麻酔科医の視点で麻酔科医を確実に補助することで、通常2名で実施する麻酔導入や維持、覚醒の1名の代替えとして、日中だけで無く、夜間休日にも対応した。臨床工学技士は麻酔補助業務に徹することで麻酔科医は患者に集中でき、確実に業務負担を軽減し、日中の手術稼働率を向上させ手術室スタッフ全体の働き方改革に繋がったと考える。
臨床工学技士による医師への働き方改革は、病院管理者、医師および臨床工学技士の姿勢と考え方の改革により、確実に機能し、安全性、効率性の向上に寄与すると考える。