第97回日本医療機器学会大会

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Educational Lecture

教育講演4 医療総合型リスクマネジメントにおける医療の質・安全管理の新たな手法

Sat. Jun 4, 2022 2:00 PM - 2:40 PM 第1会場 (アネックスホール F201+F202)

座長:田仲 浩平(東京工科大学)

2:00 PM - 2:40 PM

[教育講演4] 医療総合型リスクマネジメントにおける医療の質・安全管理の新たな手法

北野 達也 (星城大学経営学部健康マネジメント系医療マネジメントコース)

リスクマネジメントとは、リスクに関して組織を指導し管理する調整された活動で、組織活動を存続させることが目的である。医療におけるリスクマネジメントが導入されたのは、度重なる医療事故が発生した1990年代で、厚生労働省により病院等へ手順書が導入された経緯から、リスクマネジメントの解釈は医療事故防止、再発防止に特化され、今日も「リスクマネジメント」と「医療安全」が同義語の扱いで、総合的なリスクマネジメントの観点からは捉えられていない。
本来、医療におけるリスクマネジメントは、患者安全・安心及び医療の質の確保、医療をめぐる内外環境(病院長交代、医療法改正、診療報酬制度改定等)の変化に対応、組織再構築、医療従事者の健康管理、情報漏洩管理、危機管理、円滑なコミュニケーションなど広範囲にわたる。基本的には、全ての組織構成員がリスク保有者であり、病院長、医療専門職が主体的に参加し効果を上げる全組織的な取組みを実施しなければならない。一方で、我が国では医療法46条により病院長は医師・歯科医師が登用されており、欧米のように医療経営・管理、リスクマネジメント専門科目等修得した病院長が配置されず、任期も流動的で内部統制が図れない要因の一つとして挙げられる。また、医療機関における構成員が各医療専門職の法律に基づき定義・業務内容が定まっており、HERMについて学問体系的に学び実践力を身につける機会がない、兼任できないなどの現状である。
我が国独自の診療報酬制度(受診・入院、処置、処方で収益を得る仕組み)により自治体病院では、経営統合後も未だ80%以上が赤字運営、最新設備投資等も困難な状況で年間平均120病院が閉院している。さらに、COVID-19(SARS-CoV-2)罹患者の受診・入院が困難な医療提供体制やHCP(医療継続計画)等の解決課題も山積であり、欧米に優るHERM専門家、臨床監査役などの高度専門職人材育成・配置が急務である。今回述べる新たなHealthcare Enterprise Risk Management北野(医療総合型リスクマネジメント)における医療の質・安全管理の新たな手法、開発ツールによる医療事故低減、さらに効果的・効率的な組織創りのため、予測力、五感鍛錬力、直感力、柔軟な発想力、即断・即決力を養う新たなNTS強化手法として演者考案「KIT-Works北野」について報告する。