第98回日本医療機器学会大会

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Oral presentation

技術開発/改良

技術開発/改良

Fri. Jun 30, 2023 9:00 AM - 10:10 AM 第4会場 (アネックスホール F204)

座長:吉田 靖(滋慶医療科学大学)

10:00 AM - 10:10 AM

[36] 指圧や強磁場による経穴における赤色光および赤外光反射の変化

佐野 元昭1, 平井 紀光2 (1.桐蔭横浜大学医用工学部臨床工学科, 2.日本医療科学大学)

鍼灸や指圧による治療の有効性はWHOでも認められているが,これらの手法は経験や伝承によるところが大きく,その科学的根拠を示すことは難しい.そこで我々は,経穴の状態をなんとか数値化できないか検討しており,その一つの試みとして,経穴における光反射に着目している.そして現在,反射型パルスオキシメータを利用して,経穴における赤色光および赤外光の反射強度を調べている.この反射型パルスオキシメータには,660nmの赤色光と 880nmの赤外光の2光源を持つ酸素飽和度センサ(MAX30102)が2個搭載されており,一方を経穴上に,他方を経穴以外の部位に固定することにより,両部位の反射光強度が比較できるようになっている.これら2個のセンサは,マルチプレクサTCA9548Aを介してマイクロコントローラーESP32のSCLとSDAに接続され, I2C通信により制御およびデータ伝送をおこなうようになっており,その制御にはArduino言語を用いた.測定された各反射光強度のデータは,COMポート(USB)を介してPCにリアルタイム伝送され,PCにより表示および保存をおこなった.この装置を用いて,上腕にある経穴の「孔最」と,経穴以外の部位にそれぞれセンサを固定し,その状態で,親指の付け根にある経穴の「魚際」を約10秒間指圧したところ,孔最における赤色光および赤外光の反射強度が,指圧している間だけリアルタイムで増加した.さらに,SpO2を計算したところ80%を下回る値が観測された.しかし,指圧による物理的な要因が血流に影響を与えたとも考えられるので,非接触な刺激として,強力な磁石(最大磁束密度1.2 Tのマグネットバー)を用いて同様の計測を行った.その結果,指圧と同様に,磁石を魚際に近づけると,孔最における赤色光および赤外光の反射強度がリアルタイムで増加し,SpO2も80%を下回った.この機序については検討中であるが,光反射が,経穴の状態の指標の一つになり得ることが示唆された.