9:30 AM - 9:40 AM
[5] 熱変性蛋白質を抽出可能な抽出液の検討
【背景】
日本医療機器学会から発行されているガイドライン1)に記載されている抽出液(1% SDSpH11)は変性した蛋白質を抽出できず,洗浄評価をおこなう際には 60℃を超えない工程で洗浄をおこなう必要がある.しかし,実際の洗浄工程ではプリオン対策なども含め 60℃を超える洗浄工程が採用されており,実際の洗浄工程における洗浄評価をおこなうには変性した蛋白質を抽出できる抽出液が必要である.今回,熱変性した血液を抽出できる中性の新規抽出液を開発したため報告する.
【方法】
プロタミン添加羊血液50μlをステンレス板に塗布し,オートクレーブを用いて95℃にて10分間血液を湿熱変性2)させた.新規抽出液(以下開発品)および従来の抽出液(1% SDS,1% SDSpH11,1% SDSpH1 3/以下従来品)に熱変性血液を40℃にて3.5時間静置浸漬し,抽出をおこなった.
【結果】
従来品では熱変性血液を完全に抽出できなかったのに対して,開発品では物理力を加えることなく熱変性血液をほぼ完全に抽出することができた.開発品はOPA測定において血液の蛋白質定量を阻害することなく,BSAの検量線も直線性良く測定できることを試験にて確認済みである.また,室温で抽出をおこなった場合8時間で40℃ 3.5時間抽出と同等の抽出力を有し,pHを上げることで抽出力が向上することもわかっている.しかし,実際に湿熱変性した血液汚染物を正しく測定できているかは検証が十分でなく,今後検討する必要があると考えている.また,開発品の抽出力向上のメカニズムが明らかにできていないため,メカニズムの解明も今後の課題である.
【文献】
1)一般社団法人日本医療機器学会.医療現場における滅菌保証のガイドライン2021, p.101.
2)植松美幸ほか.再使用可能および再製造医療機器の清浄性評価における新規残留タンパク質回収・定量法.医機学.2022. 92(4). 400-414.
日本医療機器学会から発行されているガイドライン1)に記載されている抽出液(1% SDSpH11)は変性した蛋白質を抽出できず,洗浄評価をおこなう際には 60℃を超えない工程で洗浄をおこなう必要がある.しかし,実際の洗浄工程ではプリオン対策なども含め 60℃を超える洗浄工程が採用されており,実際の洗浄工程における洗浄評価をおこなうには変性した蛋白質を抽出できる抽出液が必要である.今回,熱変性した血液を抽出できる中性の新規抽出液を開発したため報告する.
【方法】
プロタミン添加羊血液50μlをステンレス板に塗布し,オートクレーブを用いて95℃にて10分間血液を湿熱変性2)させた.新規抽出液(以下開発品)および従来の抽出液(1% SDS,1% SDSpH11,1% SDSpH1 3/以下従来品)に熱変性血液を40℃にて3.5時間静置浸漬し,抽出をおこなった.
【結果】
従来品では熱変性血液を完全に抽出できなかったのに対して,開発品では物理力を加えることなく熱変性血液をほぼ完全に抽出することができた.開発品はOPA測定において血液の蛋白質定量を阻害することなく,BSAの検量線も直線性良く測定できることを試験にて確認済みである.また,室温で抽出をおこなった場合8時間で40℃ 3.5時間抽出と同等の抽出力を有し,pHを上げることで抽出力が向上することもわかっている.しかし,実際に湿熱変性した血液汚染物を正しく測定できているかは検証が十分でなく,今後検討する必要があると考えている.また,開発品の抽出力向上のメカニズムが明らかにできていないため,メカニズムの解明も今後の課題である.
【文献】
1)一般社団法人日本医療機器学会.医療現場における滅菌保証のガイドライン2021, p.101.
2)植松美幸ほか.再使用可能および再製造医療機器の清浄性評価における新規残留タンパク質回収・定量法.医機学.2022. 92(4). 400-414.