第98回日本医療機器学会大会

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Oral presentation

医療安全対策

医療安全対策2

Sat. Jul 1, 2023 2:00 PM - 2:50 PM 第3会場 (アネックスホール F205+F206)

座長:生田 義浩(熊本大学)

2:30 PM - 2:40 PM

[82] 医療機器の洗浄および滅菌供給におけるインシデント発生要因の検討

谷口 雄司, 深田 敬子, 秦 英司, 米山 久美子, 千酌 浩樹 (鳥取大学医学部附属病院 医療安全管理部)

【はじめに】
インシデントレポート(レポート)は,患者への影響という観点で報告されることが多いため,医療機器の洗浄および滅菌供給に関するレポートは少なく,その発生要因に対する報告も少ない.今回われわれは,医療機器の洗浄および滅菌供給におけるインシデントの発生要因について検討した.
【対象と方法】
2010年1月から2022年12月までに日本医療機能評価機構医療事故情報収集等事業に登録された133,074件(ヒヤリ・ハット84,938件,医療事故48,136件)から,事例の概要:医療機器等,キーワード:洗浄または滅菌として抽出した193事例中,事例の内容から洗浄および滅菌供給とは無関係と考えられた24例を除いた169例.発生要因を,1)ノンテクニカルスキル(NTS):確認を怠った,観察が遅れた(怠った),記録などの不備,連携ができていなかった,患者への説明が不十分だった(怠った),判断を誤った,2)テクニカルスキル(TS):知識が不足していた,技術・手技が未熟だった,3)環境・設備機器,4)その他,の4区分に分類し,各々の有無について検討した.なお,発生要因の各分類間には重複がある.
【結果】
ヒヤリ・ハット:151例(89.3%),医療事故: 18例(10.7%).各発生要因の関与は,1)NTS:149例(88.1%),2)TS:82例(48.5%),3)環境・設備機器:91例(53.8%),4)その他:90例(53.3%)であり,いずれもヒヤリ・ハットと医療事故の間に有意差はなかった.また,4)その他90例の詳細を調べると,ルールの不備,教育・訓練,仕組みが68例と全事例の40.2%(その他の 75.6%)に関与していた.
【まとめ】
医療機器の洗浄および滅菌供給のインシデント発生要因においてもNTSの重要性は変わらない.一方で,ルールの不備,仕組み,教育・訓練など,他領域のインシデントでは少ない発生要因が関与している可能性があり,ルールの整備なども含めた安全対策が必要と考えられる.