第98回日本医療機器学会大会

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Educational Lecture

教育講演2 研究入門A:研究の進め方、研究入門B:統計の基礎

Fri. Jun 30, 2023 2:00 PM - 3:00 PM 第2会場 (アネックスホール F203)

座長:安原 洋

2:30 PM - 3:00 PM

[教育講演2] 研究入門 B:あなたも統計を用いて発表をしたくなる

~統計とは何かを理解しよう~

村越 智瑳 (神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部栄養学科)

自分がおこなった研究を他人に紹介し、さらにその結果を理解していただくためには何が必要でしょうか。小説や随筆といった自分の主観を一方的に伝えるものであれば、配慮は特にいらないでしょう。しかし、科学分野では研究結果を客観的なツールを用いて紹介し、その内容を納得してもらうということが必要となります。その客観的なツールが統計ということになります。
統計というと、μやδなどのギリシャ文字、自然対数の底(ネイピア数という名前がついています)であるe、あるいはルート(√)などを含んだ複雑な数式を思い浮かべ、これらの意味を理解しないと扱えないものと考える方もいるかと思います。しかしこの統計式を理解する必要はありません。計算自体は皆様が手持ちのパソコンにデータを入力すれば、瞬時に手に入れることができます。必要なのはその統計値から自分の研究データの分布の特徴を見極め、そこから導かれる結果を解釈し、自分の考えを提示することです。
本教育講演では、以下のような統計用語解説を展開し、統計の実運用について述べていきます。
1)基本統計量:データの特徴は平均値と中央値の差の程度を見てみると感覚的にわかりやすいです。
また分散と標準偏差はデータのばらつきの度合いを示す指標ぐらいにとらえましょう。
2)正規分布:左右対称の山形をした分布のことです。日本語で書くと難しく見えますが、英語では normal distributionといいます。これをかみ砕いて日本語に訳すると「ありきたりの分布」となります。普通のデータは大体正規分布になるという感覚が大事です。しかし正規分布にならないとなったら…それはその時に考えればいいことです。
3)推測統計:全体のデータを知ることができない場合に、その一部を調べることにより全体の傾向を推定する統計手法です。世の中の事象を探るときに頻用される手法でこの概念を理解することにより、真実を見る眼が養われると考えます。
4)仮説検定:統計の醍醐味です。実験や調査で得られたデータを解析した結果がどのくらいの信頼性を持つのかを検討することができます。ただし、100%間違いないという結論は導くことができないという統計の限界があることも理解してください。
統計は面白い、実際に使ってみたいと皆様に思っていただけることを期待します。