医療機器管理3

[111] 外観点検の自動化に向けた撮影条件と画像処理方法の基礎的検討

本塚 旭¹, 川邉 学¹, 加納 隆² (1.埼玉医科大学保健医療学部臨床工学科, 2.滋慶医療科学大学大学院医療管理学研究科)

【目的】
医療機器を安全に使用するためにおこなわれる点検の中で，外観点検は点検者が目視や触れることでおこなうものであり，点検者の経験や観察力によって点検結果に差異が生じる可能性がある．そこで，カメラで医療機器を撮影し，その画像を利用することで外観点検の一部を補助または自動化するような仕組みがあれば，点検者による差異を軽減することができると考えた．そこで，様々な撮影条件や画像処理により医療機器の外観の異常の検出が可能か，基礎的な検討をおこなった．
【方法】
医療機器はテルモ製の輸液ポンプとシリンジポンプとした．医療機器は「正常」およびテープの付着や汚れなどを加えた「異常」を模擬し，撮影ボックス内で撮影した．撮影はカメラの感度や絞り値の違い，照明の種類や方向，フィルタの有無など様々な条件でおこなった．撮影画像は，画像処理ライブラリのOpenCVを使用して様々な画像処理を加え，異常の検出が可能か検証をおこなった．
【結果・考察】
医療機器の外観の異常を検出するため，「正常」との比較や，画像処理による異常な部位を強調することとした．そこで，「正常」と可能な限り同一の条件で撮影することや，ノイズが少なく点検に必要な範囲にピントが広く合うように撮影することが必要であることが分かった．また，奥行方向の情報を取得することも必要であり，照明を利用することで立体感を出す，絞り値を大きくして被写界深度を深くする，フィルタによって不要な反射光を除外することも有効であった．撮影画像はエッジ検出や二値化処理により小さな傷などを検出することができた．さらには「正常な状態」と「異常な状態」の画像の差分を取ることで，変化した部位を抽出することができ，人の目では気付きにくいわずかな変化でも検出することができた．
【まとめ】
外観点検に適した撮影条件および画像処理方法を検証した．外観点検の補助として活用することで，異常の発見に寄与すると考えられた．