第99回日本医療機器学会大会

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Oral presentation

災害報告・対策

災害報告・対策

Fri. Jun 21, 2024 4:00 PM - 4:40 PM 第3会場 (アネックスホール F205+F206)

座長:生田 義浩(熊本大学)

4:30 PM - 4:40 PM

[39] 広域災害に備えた電気自動車による医療機器稼働実証実験の動向

彦坂 宗平 (浜松医科大学医学部附属病院 材料部)

【はじめに】
南海トラフ地震が生じた場合,傷病者の非被災地への搬送や医療資機材の供給支援が遅れる可能性がある.その際一定期間地域で何とかするしかない状況が発生する.近年普及してきた電気自動車(EV)を地域のインフラととらえ活用することは,災害時の医療継続の一手段になり得る.
【目的】
近年の実証実験においてEVを使用して医療機器を稼働した事例を2つ挙げ,広域災害発生時の地域の医療継続について考察する.実験1: EVによる透析装置稼働実証実験(2020年10月),HONDAのFCEV(燃料電池自動車)と可搬型外部給電器を使用して個人透析機器に給電し閉鎖回路で模擬運転させた.透析装置のアラーム発生はなく,オシロスコープ上ではノイズやスパイク等のゆがみのない正弦波が出ていた.最後まで安定した電気が供給され災害時にはFCEVと可搬型外部給電器により個人透析装置は稼働可能と考えられた.実験2:EVによる過酸化水素ガスプラズマ滅菌装置稼働実証実験(2023年8月),日産のバッテリEVと可搬型外部給電器を使用して,ASP Japan過酸化水素ガスプラズマ滅菌装置に給電し滅菌をおこなった.運転中のアラームはなく,物理的インジケータ,CI,BIともにトラブルなく滅菌が完了した.
【考察】
従来発電機では医療機器を稼働させることは非推奨であったがEVと可搬型外部給電器を用いることで,精密な医療機器であっても稼働可能なことが実証実験により明らかになってきている.各自治体で初期医療提供体制構築計画は出来ているが医療継続に必要な医療器材の再生について準備は不十分と考える.滅菌装置をあらゆる場所で稼働できることは,地域に設置される医療救護所や医療搬送拠点,停電や設備損壊で滅菌できない病院等の医療継続に資すると思われる.地域で自助・共助を発揮せざるを得ない時,対応手段は一つでも多い方が良い.
【結語】
EVの活用は広域災害時に地域での医療継続体制作りに寄与すると思われる.