第99回日本医療機器学会大会

講演情報

一般演題

臨床工学

臨床工学

2024年6月21日(金) 10:20 〜 11:20 第4会場 (アネックスホール F204)

座長:真茅 孝志(久留米大学)

10:20 〜 10:30

[47] 人工心肺のための圧閉ピストン変位高精度制御可能なオクルーダーユニットの設計開発

深山 天空, 森下 武志 (桐蔭横浜大学大学院工学研究科医用工学専攻)

【はじめに】
開心術で用いられる人工心肺装置の回路において,人体から血液を取り出す脱血回路中の流量調整はオペレータにおける重要な要素技術の一つである.この脱血流量調整は脱血回路の途中に鉗子や手動のオクルーダー装置を用いておこなわれ,専門的な知識や経験に頼らざるを得ない操作となっている.そのため,この脱血回路のチューブ圧閉度と脱血流量の関係を示す定量分析に関する研究はほとんど見受けられず,体外循環装置に関する専門書や,この操作を主に担当する臨床工学技士の養成に用いられる教科書等においても,定量データに基づく技術的解説に至っていない.
【方法】
そこで本稿では, 脱血流量を定める脱血チューブ圧閉度合を精度よく計測するため,圧閉ピストン変位の精密な制御と,それをモニタできるオクルーダーシステムを開発したので紹介する.
【結果】
オクルーダーの構成機構となる圧閉ピストンの精密な変位制御を実現するため,本研究ではマイクロメータを適用した.マイクロメータはねじ機構となっており,ツマミ部の回転角が測定部の直線的な変位に変換されるので,これを適用すればピストン変位を精密に制御することができる.ツマミの精密な回転制御の実現には,バックラッシュの無い50:1のハーモニックドライブを装着したステッピングモータを用い,これらを組み合わせたシステム設計をした.
【結論】
ステッピングモータ1ステップあたり設計上0.5μm,機械構造によるばらつきを含めた制御可能な最小変位が15μmとなるピストン制御機構が開発できた.今後我々は,これを用いて脱血チューブの圧閉度と脱血流量の定量分析をめざす.これにより医療技術において未開拓であった脱血回路における流量調整に関する定量的一般化への貢献に期待ができる.また,将来この高精度制御可能なオクルーダーユニット技術は体外循環装置の自動制御化においても適用できる展望も兼ね備えている.