2:20 PM - 2:30 PM
[77] 歯科用ファイルの洗浄方法の検討
歯科用ファイルは,歯の根管を上下方向の往復運動による切削・研磨で拡大し,根管壁を平滑にするために用いる器具である.その添付文書には,「使用後は,水洗の後,超音波洗浄器,清掃液,消毒剤などにより付着物を完全に除去した後,充分に乾燥させ,医療機関により確認され,検証された滅菌条件において滅菌をおこなうこと」とされている.当院では,1日あたり約5,000本の歯科用ファイルが使用されており,15分間の超音波洗浄の後,蓋つきの網カゴに入れ,ウォッシャーディスインフェクター(以下WD)にて洗浄を実施している.超音波洗浄器では中性酵素配合洗剤による浸漬洗浄,そこからの取り出し,網カゴへ入れ替え,WDによる洗浄と工程が多く,予備洗浄なしで減圧沸騰洗浄機(RQ型,RN型)による洗浄と洗浄評価比較をおこない,工程の少ない減圧沸騰洗浄機へ手順変更が可能か検討したので報告する.マスター製品の選定とOPA法による抽出条件(定量下限の4μg/本以上)の決定のために,予備試験をおこない,マスター製品をHファイル(21mm#15)とした.羊血汚染によるテストデバイスを3日間室温で放置したものを1セット 10本とし,洗浄評価比較をおこなった.コントロールは未使用滅菌品,未使用未滅菌品とし,テストデバイスを「超音波洗浄後にWDで洗浄する」,「予備洗浄せずに減圧沸騰洗浄機(RQ型)で洗浄する」,「予備洗浄せずに減圧沸騰洗浄機(RN型)で洗浄する」の方法により各5回洗浄をおこない,残留蛋白質量の平均値を比較した.その結果,RQは2.8±1.9μg,RNは3.5±1.3μg, WDは5.5±2.4μgであった(平均±標準誤差).いずれの方法を用いても残留蛋白質量に差は認められなかった.以上のことから,現行の超音波洗浄器およびWDの両方を用いた洗浄方法から減圧沸騰洗浄器による洗浄方法への変更可能性が示唆された.