[O-1-030] 股関節慢性疼痛患者におけるDTI指標変化:MRSとの比較研究
【目的】慢性疼痛患者(変形性股関節症)において視床部1H-MRSに変化があることが報告されている。視床および視床に連絡する白質線維の水拡散に変化が起こることも予想されるが、詳細な検討はほとんど行われていない。本研究ではMRSで得られる代謝物情報とDTIで求められる水拡散情報を比較し、疼痛に伴う脳内代謝物変化とDTIパラメータの関連を検討した。【方法】GE製signaHDxt3Tを用いて、視床部の1H-MRSをPRESS法にてデータ収集した(TR2000ms、TE35ms、128回加算及びTR5000ms、TE35ms、64回加算)。MRS解析にはLCModelを用い、ミオイノシトール、コリン、NAAのクレアチン比を算出した。EPI-distortion補正後の拡散テンソル画像(TR15000ms、 13軸、2NEX)上に、左右の内包後脚の前後に30or40mm^2のROIを置きFA値を算出し、視床部に100mm^2のROIを置きMDを算出した。【結果・考察】患側・健常側に有意差がなかったので(p>0.05、 Wilcoxon)、MRSおよびDTIデータは両側の平均の値を用いて評価した。コリン・クレアチン比と内包後脚後部のFA値で強い正の相関があり(ρ=0.82、n=12、p<0.01、 Spearman)、コリン・クレアチン比と視床のMDでも弱い負の相関があった(ρ=-0.73、n=12、 p=0.016、Spearman)。内包後脚で後部のみに相関がみられた原因は、内包後脚の後方1/3の部位で知覚線維が多く存在しているためと思われる。コリン・クレアチン比のみに有意な相関があった点についての考察にはより詳細な検討が必要と考えられる。【結論】慢性疼痛患者のMRS・DTI指標には有意な相関があり、DTI情報も痛みの評価に有効であることが示唆された。