[O-1-050] 生体組織の緩和時間と粘弾性を模擬したMRE用ファントムの開発
【目的】非侵襲的に組織粘弾性を推定可能なMRエラストグラフィ(MRE)システムのキャリブレーションや撮像技術の評価には,粘弾性率が既知で生体組織と特性が近似したファントムの利用が望まれる.本研究では,昨年度本学会のプロジェクト研究で作製したファントム(以下,従来ファントム)と比較して肝臓に近い緩和時間と粘弾性を有するMRE用ファントムの開発を目的とした.
【方法】ファントムは,作製が容易であるとともに長期安定性に優れているアクリルアミドを主成分とし,緩和時間の短縮と粘性の増大を目的とした調整薬剤として,塩化ニッケル(II)六水和物とグリセリンをそれぞれ使用した.MREと動的粘弾性測定装置(レオメータ)を利用して測定するために,直径11 cm×高さ11 cmの円柱形状と,厚みが2 mmのシート状のゲルを作成した.MRE測定には,SE-EPI-MREシーケンスを使用し,外部加振周波数は62.5 Hzとした.T1値の測定はサチュレーションリカバリー法(SE法),T2値の測定はマルチエコーSE法を使用した.MRI撮像室の設定温度は23度にした.レオメータ測定には,サンプルの直径を20 mm,周波数の範囲は0.2~47.7 Hz,測定温度は23度,振幅は3%ひずみ一定とした.3サンプルを測定し,平均値を求めた.また,温度依存性を確認する測定では,周波数は15.1,30.1,47.7 Hz,設定温度は17から29度とした.粘性の増大は,粘性の寄与の大きさを表す損失正接を算出することで評価した.
【結果】T1値は従来ファントムの1355 msから753 ms,T2値は1025 msから326 msとなり,T1値とT2値共に従来ファントムより生体組織に近い値に短縮した.レオメータにより周波数30.1 Hz,設定温度を17から29度で測定したときの貯蔵弾性率と損失弾性率の平均±標準偏差はそれぞれ,3178±22.2 Paと255±5.4 Paとなった.他の周波数でも同様に,温度依存性が小さいことを確認した.MRE測定とレオメータ測定より,今回作製したファントムは従来ファントムよりも損失正接が約0.111から0.158となり約1.4倍となった.
【まとめ】肝臓に近い緩和時間と粘弾性を有するMRE用ファントムを作製できた.
【方法】ファントムは,作製が容易であるとともに長期安定性に優れているアクリルアミドを主成分とし,緩和時間の短縮と粘性の増大を目的とした調整薬剤として,塩化ニッケル(II)六水和物とグリセリンをそれぞれ使用した.MREと動的粘弾性測定装置(レオメータ)を利用して測定するために,直径11 cm×高さ11 cmの円柱形状と,厚みが2 mmのシート状のゲルを作成した.MRE測定には,SE-EPI-MREシーケンスを使用し,外部加振周波数は62.5 Hzとした.T1値の測定はサチュレーションリカバリー法(SE法),T2値の測定はマルチエコーSE法を使用した.MRI撮像室の設定温度は23度にした.レオメータ測定には,サンプルの直径を20 mm,周波数の範囲は0.2~47.7 Hz,測定温度は23度,振幅は3%ひずみ一定とした.3サンプルを測定し,平均値を求めた.また,温度依存性を確認する測定では,周波数は15.1,30.1,47.7 Hz,設定温度は17から29度とした.粘性の増大は,粘性の寄与の大きさを表す損失正接を算出することで評価した.
【結果】T1値は従来ファントムの1355 msから753 ms,T2値は1025 msから326 msとなり,T1値とT2値共に従来ファントムより生体組織に近い値に短縮した.レオメータにより周波数30.1 Hz,設定温度を17から29度で測定したときの貯蔵弾性率と損失弾性率の平均±標準偏差はそれぞれ,3178±22.2 Paと255±5.4 Paとなった.他の周波数でも同様に,温度依存性が小さいことを確認した.MRE測定とレオメータ測定より,今回作製したファントムは従来ファントムよりも損失正接が約0.111から0.158となり約1.4倍となった.
【まとめ】肝臓に近い緩和時間と粘弾性を有するMRE用ファントムを作製できた.