[O-1-097] レビー小体型認知症の中脳におけるフラクタル次元解析の有用性;VSRAD advanceによる白質VBMとの相関
【背景】レビー小体型認知症(DLB)において、いくつかの報告では脳幹に特異的と思われる萎縮を認める。萎縮を評価する方法として、VBM以外にも、自己相似性および形態の複雑さに焦点を当てるフラクタル次元解析が、軽度の形態変化も評価できる手法として注目されている。しかし、これまでMRIを用いた中脳のフラクタル次元解析の報告はない。今回我々は、軽度の中脳萎縮を認めるDLBにおいて、中脳における自己相似性の有無を評価し、中脳のフラクタル次元(FD)とVBMによる白質萎縮値(正のZスコアの平均値)との相関解析を施行した。【方法】認知症に対してMRIを施行された54-86歳の患者群から後方視的にDLB群を無作為に抽出した。3D矢状断T1強調画像をVSRAD advanceにて、SPM8による皮質、白質、CSF spaceの分割とDARTELによる形態変換を行った後、8mm立方の正規分布野で平滑化を行い、中脳白質について、VSRAD advance付属の健常者群(54-86歳)に対する正のZスコアの平均値を求めた。Zスコア1.5未満であった軽度の中脳萎縮を伴う38症例を対象とした。次にImageJを用いて、3D矢状断T1強調画像をAC-PC線に平行な1mm厚の断面に再構成し、右乳頭体から中脳橋移行部までのそれぞれのスライスに対して、box-counting法でFD、決定係数(R2)を算出した。右乳頭体から4mm尾側のスライスで側頭葉内側と中脳を分離できなかった8症例は除外した。中脳を分離できた30例(男性15例、女性15例、76±6歳)に対して、中脳のFD(右乳頭体より4mm尾側のFD(FD4)、5mm尾側のFD(FD5)、6mm尾側のFD(FD6)、FDの最大値(FDmax)、FDの最小値(FDmin))と、中脳白質の正のZスコアの平均値に対して、相関解析を施行した。【結果】中脳に自己相似性を認めた(R2=0.997±0.002)。FD4、FD5、FD6、FDmax、FDminと中脳白質の正のZスコアの平均値との相関係数rはそれぞれ、-0.357、0.124、-0.195、-0.622、-0.018であり、FDmaxで最も強い負の相関が見られた。【結論】DLBにおける中脳のFDmaxは、VSRAD advanceを用いた白質VBMの正のZスコアの平均値と中等度の負の相関を示し、フラクタル次元解析は軽度の中脳萎縮の評価に有用であると考えられた。