[O-1-123] 温度感受性リポソームを用いたCEST MRI用プローブによる化学シフトの制御に関する検討
【背景・目的】化学交換飽和移動 (Chemical Exchange Saturation Transfer: CEST) を利用した核磁気共鳴撮像法 (CEST MRI) はプロトン供与体のプロトンとバルク水のプロトンとの化学交換を利用して、画像化する分子イメージング手法である。またリポソームにCEST試薬を封入するlipoCESTでは、リポソーム内外の水のプロトンの化学交換により高感度化が可能である。さらに温度感受性リポソームを利用することで、温度感受性CEST MRI用プローブの開発が可能である。そこで、本研究では常磁性ランタノイド金属を用いたCEST試薬を温度感受性リポソーム内に封入して、温度感受性MRI用プローブとしての有効性の確認及び透析外液の浸透圧を変化させることによる化学シフトの制御を目的とした。【実験方法】温度感受性リポソームは、DPPCとBrij78を用いて作製した。またCEST試薬には常磁性ランタノイド金属のジスプロシウム(Dy)、テルビウム(Tb)、ツリウム(Tm)のそれぞれにキレート剤のDOTAを結合したものを用いた。実験1: DPPCとBrij78を15 : 85のモル比で作製した温度感受性リポソームに80 mMのCEST試薬を封入して、内液と等張なNaCl溶液で透析した後、温度を34, 36, 38, 40, 42 ℃に変化させてNMR測定を行った。実験2: DPPCとBrij78を10 : 90のモル比で作製した温度感受性リポソームに20 mMのCEST試薬を封入して、NaCl溶液の浸透圧を等張, 300, 600, 900, 1200 mOsMに変化させて透析した後、NMR測定を行った。【結果】実験1: バルク水のピークとは別にリポソーム内のCEST試薬によるピークが確認された。Dy-DOTAは約-2.0 ppm、Tb-DOTAは約-1.2 ppm、Tm-DOTAは約1.0 ppmシフトした。また、温度を上げていくと約42 ℃でそれらのピークは消失した。実験2: Dy-DOTAとTb-DOTAはシフト方向が変化し、シフト量は浸透圧の上昇に伴って増加した。また、Tm-DOTAではシフト方向は変わらないままシフト量は増加した。【結論】温度感受性CEST MRI用プローブとしての有効性を確認し、透析外液の浸透圧を変化させることによる化学シフトの制御の可能性が示唆された。