[O-2-204] 全脊椎における慢性炎症性脱髄性多発神経炎の描出を目的とした造影2Dおよび3DFSPGRのファントムによる検討
【目的】慢性炎症性脱髄性多発神経炎(chronic inflammatory demyelination polyradiculoneuropathy:CIDP)において,診断基準である神経根の造影あるいは馬尾の肥厚を描出するために造影magnetic resonance imaging(MRI)が行われる.この際,一般的にスピンエコー法の横断像をつなぎ合わせた手法が使用されるが,全脊椎の画像を得るには撮像時間が長く,specific absorption rateの制限による撮像条件の制約を受けやすい.そこで,2Dおよび3D fast spoiled gradient recalled acquisition in the steady state(FSPGR)を利用して全脊椎におけるCIDPの病変を描出するためにフリップ角(FA)とコントラストおよび,スライス方向の信号雑音比(SNR)の変化を検討した.【方法】3.0TのMRIを使用し,2Dと3DのFSPGRのTRは各々400msと7.6ms,TEはinphaseに設定した.造影剤注入後30分以内の造影剤濃度を想定して50μg/mLから90μg/mLまで溶液濃度を段階的に変化させた円柱容器をラード中に配列した.このファントムをクアドラチャヘッドコイルに配置して2Dおよび3DFSPGRで撮像し,FAと各濃度の信号値の関係と,造影剤濃度における画像コントラストを求め比較した.次に8チャンネルの脊椎用コイルにシリコンを封入した円柱状ファントムを配置し,スライス方向における2Dおよび3DFSPGR画像のSNR変化を求め比較した.【結果】すべてのガドリニウム造影剤において,2Dと3DのFSPGRのFAが30°と10°の場合に,信号強度は基準濃度と比較して最も大きく変化した.このとき,画像コントラストは最大となり,3DSPGRは2DFSPGRより大きくなった.一方,スライス方向のSNRは磁場中心から100mm離れた位置において3DFSPGRは2DSPGRよりも30%低下した.【結論】本ファントム実験によって2Dと3DのFSPGRのコントラストが最大となる最適FAを求めることが可能になった.3Dはコントラスト,SNRともに2Dを上回るが,全脊椎を均一なSNRでつなぎ合わせるために重複した撮像範囲を設定する必要がある.