[O-2-224] 3T装置における下肢FBI法の問題点-delay time設定の許容範囲-
【目的】FBI法で撮像を行う場合,収縮期および拡張期において血流信号が安定している時間にdelay timeを設定しなければならないが,3T装置において経験の少ない術者が撮影する際は,血管の描出不良となる場合をしばしば経験する.この原因として最適delay timeからずれて設定されることが多い.今回,我々は1.5Tおよび3T MRI装置で,delay timeの設定許容範囲(sweet spot)ついて検討を行った.【方法】使用装置は,東芝社製Vantage Titan 3T,EXCELART Vantage powered by Atlas 1.5T,使用コイルはAtlas SPEEDERスパインおよびAtlas SPEEDERボディーである.今回の研究内容を十分説明し,同意を得た健常ボランティア10名(男:女=8:2, 平均年齢26.7歳)の下腿動脈を対象とし,ECG-prep用いて,delay timeを0~950 msまで50ms毎変更し,撮像を3回行い,膝窩動脈の信号値を測定した.今回の検討ではdelay timeの許容範囲を,最大値(拡張期の最適値)と最小値(収縮期の最適値)の差の10%までとし,収縮期および拡張期のsweet spotを求めた.統計学的有意差はt検定にて行った.【結果】収縮期のsweet spotは,1.5T装置では92.6 ± 24.9ms,3T装置では,74.0 ± 19.9msとなり3T装置の方が短くなり,有意差は認められなかった(p=0.08 > 0.05).一方,拡張期のsweet spotは,1.5T装置では184.1 ± 29.9ms,3T装置では,95.0 ± 21.5msとなり,3T装置の方が有意に狭かった(p=4.65×10-7 < 0.05).【結論】3T装置では1.5T装置に比べ,SNRが高くなり信号値の変動が大きくなったため,拡張期のsweet spotが狭かった.このため撮像経験の少ない術者にとっては設定が難しく,画質を安定することが出来ない一因となると考えられた.