[O-3-289] PNIPAAm系ゲル材をファントム材として利用したQSI評価用PHANTOMへの適用研究
【目的】QSIは,制限拡散の領域である生体内の細胞構造を評価できる特徴をもつ撮像シーケンスである.その撮像シーケンスから得られた微細構造を観察し評価できるファントムには、含水を伴った数十μm単位の微細な孔を組織として連続して有することが必須である.本研究はq-space imaging(QSI)における画像評価についてファントムを利用した評価が必要と考え高分子を用いて材料設計し、高分子重合反応によりファントムを化学合成し作成した。また本学会のq-space 委員会の要請をうけて作成した.【方法】高分子モノマーであるNIPAAmを重合あるいは複合重合させPNIPAAmゲルおよびPNIPAAm-PHEMA系ゲルを製作した.ファントムの水分含有率は生体組織に近似させるため作製時の蒸留水重量比を60~80[wt%]として作製した.【使用機器】NMR緩和計測装置: 0.47T NMR装置(minispec NMS120,BRUKER社製),T1値計測: IR法,T2値計測: CPMG法.MRI装置(Achieva3.0T Quasar Dual; PHILIPS Electronics Japan),IDL6.4(ITTvis),ImageJ(Broken Symmetry Software)【結果】蒸留水重量比を増やすことでNMR緩和値(T1,T2値)が延長する傾向を示し,ADCが大きくなった.電子線マイクロアナライザ(EPMA)装置での観察では,蒸留水重量比が大きいほど,内部微細構造の孔サイズが大きなり、孔の壁厚が減少する傾向を示した.QSI解析の指標の1つである平均変位(MD value)は蒸留水重量比が大きくなるにつれ増大した.MD valueとEPMA装置での画像観察による計測数値には正の相関が認められた.PNIPAAmゲル系ファントム材料では仕込み時の含水量と合成時の温度、時間がNMR緩和効果および孔径、壁厚等の形状や粘性、強度等の材料特性に影響を与えることが示唆された.【まとめ】 1.PNIPAAmゲルファントムはQSI系あるいはDTI系撮像シーケンスから得られる画像の描出能(微細構造、サイズ)の再現性や精度について評価可能である.2.材料特性は高分子材料設計による重合反応作製により,従来までの物理ゲル系より強度安定性に優れている。3.ゲルの構造はQSI撮像ファントムに必須な微細孔構造を持ち,またその孔の大きさをある程度任意に設計できる.