第42回日本磁気共鳴医学会大会

講演情報

一般演題

消化器

消化器

2014年9月20日(土) 11:20 〜 11:50 第3会場 (3F 源氏の間南)

座長:赤羽正章(NTT東日本関東病院 放射線部)

[O-3-299] 食道癌のq-Space Imagingによる評価:手術材料におけるQSIパラメーターと組織学的所見の比較

山田一郎1, 疋島啓吾2,3, 宮坂尚幸4, 東海林裕5, 伊藤栄作6, 河野辰幸5, 小林大輔6, 江石義信6, 岡野栄之2 (1.東京医科歯科大学医学部 放射線科, 2.慶應義塾大学医学部 生理学教室, 3.実験動物中央研究所, 4.東京医科歯科大学医学部 産婦人科, 5.東京医科歯科大学医学部 食道・胃外科, 6.東京医科歯科大学医学部 病理部)

【目的】食道癌のq-Space Imaging(QSI)を施行し、腫瘍の壁深達度、組織学的分化度及びリンパ節転移の評価におけるQSIの有用性を検討すること。【方法】食道癌20症例(男性18例、女性2例;46~83歳、平均年齢66歳)の手術材料における20腫瘍をホルマリン固定後に、7.0-TのMRI装置(Bruker)と4チャンネルのフェーズドアレイ型表面コイルによって撮像した。QSIはTR 3000 msec、TE 29 msec、field of view 50-60 x 25-30 mm、マトリックス256 x 128、スライス厚2 mm、0~7163 sec/mm2の10個のb値及びy軸方向のmotion-probing gradientにて撮像を行い、displacement distribution profilesから3種類のQSIパラメーター(mean displacement、probability for zero displacement及びkurtosis)を算出した。MRI所見と組織学的所見との比較検討を行った。【結果】QSIではmean displacementマップ、probability for zero displacementマップ及びkurtosisマップによって食道壁の各々の層構造を明瞭に描出することができた。食道癌は正常食道壁に比べて低いmean displacement値(6.01 ± 0.50 μm)、高いprobability for zero displacement値(49.8 ± 3.8 (arbitrary unit [a.u.]))及び高いkurtosis値(52.3 ± 5.7 (a.u.))を示し、これによって全20腫瘍(100%)における壁深達度を明瞭に同定することができた。これらのQSIパラメーターは腫瘍の組織学的分化度及び組織型との間に統計学的に有意な相関(P<0.01及びP<0.05)を示し、また核細胞質比(N/C比)及び腫瘍細胞密度(cellularity)との間にも統計学的に有意な相関(P<0.01及びP<0.01)を示した。更に、QSIパラメーターは食道癌における転移リンパ節と非転移リンパ節との鑑別(P<0.01)にも有用であった。【結論】QSIは食道壁の層構造を明瞭に描出することが可能であり、食道癌の壁深達度、組織学的分化度及びリンパ節転移の評価においてきわめて高い診断能力を示すことが明らかになった。