[O-3-315] 高沸点ガスのクエンチ効果を用いた超偏極129Xe MRIの高感度化と応用
【背景・目的】我々は、超偏極129Xe(HPXe)の磁気共鳴イメージング(MRI)による肺機能診断法の開発に取り組んでいる。超偏極希ガスを製造する際、偏極率向上のためにクエンチングガスを混合し、この目的のために窒素ガスを利用していた。しかし、窒素は偏極後の分離が困難なために、体積希釈分の感度損失が生じる。これに対して、高沸点有機ガスをクエンチングガスとする事で感度増強を達成するとともに、偏極後の希ガスの分離精製を容易に実施できるという可能性を見出した。そこで、超偏極希ガスの分離精製装置を開発し、飛躍的に感度増強されたHPXeのMRIによる肺機能診断法の更なる感度・精度向上を図ることとした。【方法】自作の連続フロー型超偏極希ガス製造装置および分離精製装置を用いてHPXeを生成した。クエンチングガスはイソブテン(C4H)を使用し、偏極操作後-78℃に冷却することでHPXeを分離精製した。マウスは、C57BL6J 雄性マウス(6週齢)を用い、所定の方法で肺線維症モデルマウスを作成した(n=4)。一方、陰性対象群は生理食塩水を投与し(n=4)、3週間後に肺機能評価を行った。測定にはAgilent Unity- INOVA 400WB(9.4T)を使用した。balanced steady state free precession(b-SSFP)法を用いて磁化移動コントラスト(Xenon magnetization Transfer Contrast :XTC)画像を撮像し、肺胞と血液とのガス交換率fd (%)を求めた。さらに、1回から10回まで呼吸回数を変化させながらMRI撮像を行い、信号強度変化を解析することで1回換気割合raを求めて換気能評価の指標とした。【結果と考察】イソブテンをクエンチングガスとして用いることにより、HPXeの信号強度が従来の約2倍となった。この結果、呼吸回数が少ない段階からMRI肺画像の画質が改善され、また、呼吸機能評価における換気・拡散を表すパラメータ(ra及びfd)を包括的に評価することが可能であった。本手法を病態モデルマウスに適用することで、HPXeのMRI診断における精度・確度の向上に有効であることを確認した。