[O-3-325] 股関節放射状MRI評価と関節鏡における軟骨・関節唇所見の比較
【目的】近年、早期関節軟骨変性の定量的評価におけるT2 mappingなどのcompositional MRIの有用性が示唆されているが、股関節寛骨臼全域の関節軟骨を評価した報告は乏しい。股関節鏡と股関節MRI放射状評価を行った症例において、軟骨損傷と軟骨T2値の関連、および関節唇損傷とMRI関節唇所見の関連を検討した。【方法】対象は、当科にて股関節手術を行った症例の中で、MRI放射状撮影と関節鏡両方を行った14例14関節である。女性12例、男性2例、平均年齢は31歳(14歳-47歳)であった。単純X線では全例関節症所見は認めず、CE角は平均17°(-18°-38°)で、寛骨臼形成不全の基準値とされるCE角25°未満が8例、CE角25°以上が6例であった。Multi-echo spin-echo撮影によるMRI T2マップおよびFast Spin echo T2強調像、T2*強調像を臼蓋開口部に対して放射状撮影し、前方90°から後方90°の30°毎の7スライスにおいて評価を行った。寛骨臼荷重部軟骨を外側・内側部に2分割した際の外側部軟骨T2値を測定し、関節唇途絶像または内部信号変化を関節唇損傷ありと判定した。関節鏡視での軟骨損傷の有無、軟骨変性の定性的分類であるOuterbridge分類(Grade0-4)と軟骨T2値の関連性、および関節鏡視とMRI所見の関節唇損傷の有無の関連を検討した。【結果】軟骨損傷部は軟骨非損傷部と比べて軟骨T2値が有意に高かった(各々43.3ms、39.5ms、p<0.01)。軟骨損傷Outerbridge分類と軟骨T2値が有意に相関した(r=0.50,p<0.01)。関節唇損傷の有無に関する、放射状MRIのT2強調像、T2*強調像の感度/特異度/陽性的中率/陰性的中率は、各々56%/81%/80%/57%、82%/72%/80%/74%とT2*強調像の方が感度が高かった。【考察】股関節T2mappingによる関節軟骨評価により、単純X線上検出できない早期軟骨損傷を検出できる可能性が示唆された。非造影MRIでも関節唇の比較的良好な診断精度は得られたが、撮影シークエンスや条件などさらなる検証が必要である。